兵庫県姫路市
2023.01.10 (Tue)
目次
大丸神戸店は神姫バス(兵庫県姫路市)と連携し、バスの待合所でデパ地下グルメを中心とした百貨店の品を販売する出張催事を2022年9月からスタートしています。普段なかなか百貨店に行けない方々に大丸神戸店の商品を身近に購入していただくことで、兵庫県のローカルエリアに笑顔と活気をもたらすプロジェクトの取り組みをご紹介します。
港町・神戸や「住みたい街」として人気の西宮市がある兵庫県ですが、少子高齢化により人口が減少しています。
2009年には県内に約559万人が暮らしていましたが、2022年の統計では約540万人に減少。県の高齢化率(65歳以上の人口割合)も年々増加し、人口全体の約3割を占めるまでになりました。県内には市町の全域が過疎地域となっているところもあり、特に運転免許を持たない人にとっては、自由な移動がままならないことが大きな課題となっています。
神戸元町に店舗を構える大丸神戸店としても、移動の負担に加え、コロナ禍によって神戸方面へのお出かけがしにくいお客様に何かできることはないかと検討していました。
大丸神戸店と同様に、アフターコロナにおける新たなサービス創出を模索していたのが、兵庫県姫路市を拠点に県南部一帯に路線バスネットワークを構築する神姫バスです。
同社では、既存の路線バスを活用し乗客とモノを一緒に運ぶ「貨客混載」事業を本格的に実施。生産地から直売所への野菜を輸送したり沿線店舗の人気商品を三宮で販売したり、個性的な取り組みが好評を得ています。こうした神姫バスの取り組みが、お客様の元へ出向きたいという大丸神戸店の思いと一致しました。
以前から、農家が収穫した野菜を路線バスで運ぶ「バスの八百屋」事業で取引があった両社。日頃の商談を通じて、今回の出張催事の企画が上がりました。
「普段、なかなか神戸まで足を運べないお客様のために、私たちがお客様の元に百貨店の品を届けたいという気持ちから、神姫バスさんと協同で出張催事を行うこととなりました」と話すのは、大丸神戸店食品催事担当の塩山巧さん。
複数ある営業所やバス待合所のなかから、「荷下ろしや販売スペースがあること」など実現可能な条件をすり合わせて、県西部にある宍粟市(しそうし)山崎町の「神姫バス山崎待合所」で出張催事を行うこととなりました。
山崎町は、江戸時代から山崎藩の城下町としての歴史があり、山陽地域と山陰地域の結び目や揖保川水運の中心として発展。現在でも、姫路や鳥取を結ぶ国道29号線と中国自動車道が交わる交通の要衝となっています。
一方で、近くに鉄道はなく公共交通機関はバスとタクシーのみ。そんな待合所に大丸神戸店の出張催事がやってきたのが、2022年9月のこと。食品担当バイヤーが地下各店の名品から「山崎町で購入が難しいもの」「常温でも輸送・販売ができるもの」を厳選。高速バスに商品とスタッフを乗せて、三宮から約1時間半かけて山崎まで向かいました。
今回の企画に携わった神姫バス地域事業本部部長の野田年洋さんは「お客さまがお越しになられるかとても気になっていましたが、初回は前日に新聞で紹介されたり、その後の回ではバスに中吊り広告を出したりしたこともあって、たくさんのお客様が来店されました。これも、大丸神戸店さんの知名度の高さや各店舗様の商品に魅力を感じられたことがあってのことだと思います。」と、出張催事の成果を振り返ります。
また、塩山さんも「「初回は洋菓子のフロインドリーブさんの洋菓子や町で行列ができる老祥記さんの豚饅頭などは飛ぶように売れました。また別の回で準備した神戸店で人気のパンも好評でした。たくさんお買い上げになられた方もいらっしゃって、本当に来てよかったと思いました。一方で、まだご自宅で昆布を炊く文化が根強く残っているからでしょうか。高級塩昆布をあまりお買い求めになる方はいらっしゃいませんでした。この点は更なるリサーチが必要だと感じました。」と話します。
これまで計3回にわたって実施してきた山崎町での出張催事。「回数を重ねるたびにお客様の声をダイレクトに伺うことができるのがやりがいにつながっている」と塩山さんは言います。
「冷蔵設備が整っていないため実現はできていませんが、お客様からは『神戸の生ケーキを用意してほしい』というお声をたくさんいただいています。一方で、ある有名和菓子店の羊羹を用意しようと考えていたとき、お客様から『地元には和菓子店が多いから羊羹は買わない』というお声があり、参考にさせていただきました。今後も、この出張催事にお越しになるお客様とのコミュニケーションを通じて、喜んでいただける商品をご提案したいとスタッフみんなでがんばっています。」
また神姫バスの野田さんもこの出張催事の意義についてこう話します。
「神戸までなかなか行けないという方にとって、神戸の厳選した商品を購入できる貴重な機会はとても意義のあること。今後も定期的に実施することで、賑わいの創出につながるのではないでしょうか。また弊社では、高齢者の方々のフレイル予防のために『バスに乗ってお出かけをしましょう』とPRしています。今回、大丸神戸店さんの商品を購入されたお客様が、山崎待合所から運行している三宮行きの高速バスをご利用されて、実際に大丸神戸店さんまで足を運んでいただければうれしいですね。」
最後に、次回以降の開催に向けて、今後の課題や取り組みたいことを野田さんと塩山さんに伺いました。
「できれば山崎待合所での出張催事を定期化していきたいです。また、豊富な宍粟市の特産品を大丸神戸店さんで販売できるようになるとよいなと個人的には考えています。宍粟市と三宮が結ばれることで、人やモノが動くきっかけになります。この取り組みを山崎町で留めるだけでなく、弊社の路線がある県の内陸部や淡路島、四国でも行い、三宮に来ていただくための第一歩になれば、両社にとってwin-winになるのではないでしょうか。」(野田さん)
「まずは2023年1月の次回開催に向けて、PRの強化、品揃えの強化を果たしていきたいです。特に百貨店の催事でしか購入できない商品も加えたいと考えています。また今後も、定期開催を行うことで、より地域の方々にこの出張催事の存在を知っていただくとともに、今後はより山間部に大丸神戸店のお弁当などを積んで『バスごと出張販売』ができるようになると、より多くのお客様に喜んでいただけるのではないかと考えています。」(塩山さん)
人口減少によって活力を失いつつある兵庫県の過疎の町に活気と笑顔を届けるこのプロジェクト。気軽に三宮まで行けない方々にとって、こうした出張催事が定期的に開催されるようになると、より神戸の存在が身近に感じられるようになり、神戸へお出かけしようという気持ちになるのではないでしょうか。