京都府京都市
2023.11.24 (Fri)
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大丸京都店は8階のレストランフロアを改装し、2023年9月末にリニューアルオープンしました。49年ぶりとなる大改装により、内装やテナントを一新。営業時間を22時までとし、ランチやカフェ、ディナー、お酒まで幅広く楽しめるフロアへと生まれ変わりました。プロジェクトを担当した大丸京都店のスタッフ2人に、リニューアルにかけた想いを聞きました。
京都市を代表する繁華街である四条通に面した大丸京都店は、地元・京都の人はもちろん、観光客にも長く愛されてきた百貨店です。とくにファミリー食堂などが営業していたレストランフロアは家族連れの「ハレの場」として多くの人に親しまれてきました。
「ファミリー食堂がオープンしたのは1974年。前身の食堂を含めると約110年の歴史があります。多くの人で賑わい続けていましたが、建物の老朽化が大きな課題でした。」と語るのは、大丸京都店営業3部スタッフの北浦佳奈。全面改装が決まり、同フロアの屋上広場と一体となったリニューアルプロジェクトが始動しました。
「百貨店のレストランは親子3世代で楽しめる場。これからも長く愛されるフロアにするため、テナント店に任せきりにするのではなく、私たちも一緒にワクワクしながら創り上げたいという気持ちでのぞみました。」と語ります。
生まれ変わったレストランフロアには8店舗が入店。人気店がこれまでになかったスタイルを打ち出したり、老舗店がエリア初出店を果たしたりと、大丸京都店に新風を吹き込む顔ぶれとなりました。
テナント店を支援するリーシングを担当した営業3部の竹内悠起は「京都らしさやこれまでの百貨店のイメージを大切にしつつ、それを超える空間にしたかったんです。そんな想いに共感し、チャレンジしてくださる方々にご協力いただきました。」と当時を振り返ります。
「丸福珈琲店 ザ・パーラー」は大阪創業の老舗喫茶店で、今回が京都初出店。自慢のコーヒーに加え、京都産のフルーツや酒種を使ったメニューを充実させたパーラーとして甘党を喜ばせます。
「三田屋本店ーやすらぎの郷ー」は、ドイツの伝統製法によるハムやA5・A4ランクの黒毛和牛のステーキが味わえるレストランです。食を取り巻く文化継承にも力を入れている同店。京都産の牛肉やお米をはじめ、京都の食材をふんだんに活用しています。
「Nippon Ramen 凛 離れ produced by Lab Q」は、札幌の人気ラーメン店「Japanese Ramen Noodle Lab Q」を率いる平岡寛視さんによる京都2号店。すでに地元の人や海外の観光客からも高い評価を得ている1号店とは異なる、味噌と鶏白湯のメニューを柱にコース料理を味わっているかのような一杯を提供します。
日本では数少ないリゾット専門店「LA RISOTTERIA」は、京都市内に本格リストランテやピッツァ専門店を展開するイル ヴィアーレグループの新たな挑戦が詰まったお店です。メニューを手がけるのは、京都イタリア料理研究会の会長でもある渡辺武将シェフ。京都ならではのアレンジも加えながら、本場のイタリア料理の可能性を広げます。
各店も確かに魅力的なラインアップなのですが、目指したのは「それ以上」の場所。
「新たなレストランフロアはただ食べるだけではなく、食を通じた体験ができる場を目指しました。」と口を揃える北浦と竹内。その言葉どおり、各店舗には屋上に面した最上階という立地を活かした仕掛けや、お店とお客様とのコミュニケーションを生み出すさまざまな工夫が施されています。
レストランと共に生まれ変わった屋上広場「ことほっとてらす」との一体感を感じられるのが「Rooftop terrace CIELO by il cipresso」。祇園のイタリア料理店「il cipresso」がプロデュースするのは、イタリア人の日常に欠かせないバールのような空間です。ランチやカフェはもちろん、夜はカクテルで軽く一杯とさまざまなシーンに対応。屋上広場に面したテラス席は、街中とは思えない開放感です。
同じく屋上テラス席を設ける「VEGGIE ISO TERRACE」は、野菜料理の美味しさに定評がある五十家グループが手がける新業態。デリカテッセンとしてランチやディナーを提供するほか、テラス席で一年を通してBBQを楽しめるのも大きな魅力となっています。
ガラス張りの作業ブースを設けて職人技を余すことなく披露するのは、西日本初出店となる「炭焼 うな富士」。希少な青うなぎを地焼きと呼ばれる製法で香ばしく焼き上げる様子は、見ているだけでもごちそうです。店前から屋上に繋がる廊下には、鰻の特徴や製法について説明するパネルや鰻が泳ぐ水槽も。「お客様を楽しませたい」という熱い想いが伝わってきます。
店頭でそば打ちの様子を間近に見ることができる「そば料理 よしむら 大丸京都別邸」は、嵐山に本店を構えるそばの名店です。ガラス張りのそば打ち場では、石臼で挽きたてのそばを職人が丁寧に手打ちします。
「親子3世代という幅広い年代の方々に、どんな風に楽しんでもらうか。百貨店として積み上げてきたノウハウを各店の担当者の方々と共有し、お互いにアイデアを出し合いながら今のカタチを創り上げていきました。今後は百貨店とテナントはもちろん、お客様とも一緒に場を創ることができれば。」と竹内は意気込みます。
レストランフロアのリニューアルに伴い、食材を調達する物流面も大きく見直されました。
「京都の食材を積極的に使いたいという想いは当初からありました。そこで、京都の生産者の方々との強い繋がりを持つ株式会社ミナトと提携し、大丸京都店のために専用トラックを用意していただいたんです。」と北浦。
レストランには、京都北部の丹後エリアから丹波エリア、京都市内、南部の山城エリアに至るまで、京都府全域の生産者から良質な食材が専用トラックによる定期便で届けられます。新鮮な野菜や果物、肉や魚、乳製品、クラフトビール、ワインなど、食材のジャンルも実に多彩。ふだんはあまり見かけない珍しい食材が届くこともあるのだとか。
「フロアの全店が定期便を利用して食材を調達しています。季節によって届く食材はさまざま。どの食材をどのように使うかは、各店にお任せしています。京都の食材の美味しさや、食文化の奥深さを感じていただきたいですね。」
レストランフロアでひときわ異彩を放つのが「まんがの壁」と名付けられた一角です。こちらは食にまつわる漫画が約3,000冊そろい、誰でも無料で利用できるコーナー。漫画好きには夢のような空間です。
「食を通じた体験って何だろう?と考える中で生まれたアイデアの1つです。食にまつわるエピソードが詰まった漫画で、レストランでの食事とはまた違った楽しみを味わっていただきたいですね。」と北浦はいいます。
温かみのある木の本棚やベンチ、スツールといった家具類は、一部京都・京北町の森で育った木を使用したもの。レストランで食事を楽しんだ後や、待ち合わせの前のひとときを過ごすのに最適な、落ち着いた雰囲気を演出します。
取材中も老若男女問わず多くの人が漫画を読みふけり、それぞれの時間を楽しんでいたのが印象的でした。
約半世紀ぶりの大改装を終え、より一層愛されるレストランフロアへとチャレンジを続ける大丸京都店。リニューアルオープン後は、お客様からの評判も上々なのだそう。
「昔から通っていただいているお客様には『すごくキレイになったね!』と声をかけていただいています。白漆喰を基調に丸みを帯びた内装に仕上げ、上質さと親しみやすさを感じられる空間になったことも、喜んでいただいていますね。」と北浦。
これまでの常連さんはもちろん、これまでは見かけなかった若い世代のグループにも立ち寄ってもらえるようになったと、竹内も手ごたえを語ります。
「レストランでの食事風景や、店頭でのデモンストレーションの様子などをSNSにアップしていただく機会も増えました。レストランフロアでの時間を楽しんでもらえているのが伝わって、とても励みになります。これからも、小さなお子様からお年寄りまで、親子3世代の良い思い出となるようなレストランフロアであり続けたいですね。」
お客様やテナントインしているお店、さらには地域の生産者と共に歩む大丸京都店。レストランフロアの新たな挑戦はこれからも続きます。
大丸京都店8階レストランフロアhttps://www.daimaru.co.jp/kyoto/restaurant_floor_open/