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[高知のお菓子開発プロジェクト 前編]土地が育て、人が磨く。雪ヶ峰のミルクでつくる「しあわせミルクサブレ」

[高知のお菓子開発プロジェクト 前編]土地が育て、人が磨く。雪ヶ峰のミルクでつくる「しあわせミルクサブレ」

    2025.08.29 (Fri)

    目次

      「オール高知」をコンセプトに、高知の素材を使い、高知の人だけでつくるプロジェクトは大丸松坂屋百貨店のふたりが中心となり進められました。その結果生まれた「しあわせミルクサブレ」は、高知県香美市にある雪ヶ峰牧場の希少なミルクを使い、地元菓子メーカー・株式会社スウィーツと連携してつくられました。高知の食材や文化を全国に届けたいという想いが込められた本プロジェクト。商品開発に関わった方々の想いを前編・後編に分けてお届けします。

      「オール高知」で届ける地域の恵み

      本プロジェクトで掲げられた「オール高知」。なぜ、モノを販売する百貨店が自社商品をつくることになったのでしょうか。その背景には、地域にある良い素材を使用し、高知大丸と商品をつくることで、生産者の想いも含めて高知の魅力を届けたいという狙いがありました。

      「高知と言えば、カツオやユズ。そういった定番の商品ではなく、地域に眠る魅力的な素材を見つけて、多くの人に知ってほしいという想いがありました。地元企業と連携して商品開発することは、大丸松坂屋百貨店としてやったことがないプロジェクトです。当初は高知でのつながりをつくるところからはじめました。」と語るのは、大丸松坂屋百貨店のバイヤー・稲垣貴之。高知のいいものを届けたいという想いが原動力となり、このプロジェクトが始動しました。

      「しあわせミルクサブレ」の商品開発を担当する大丸松坂屋百貨店のバイヤー・稲垣貴之

      稲垣は高知県内のさまざまな菓子メーカーや生産者のところへ何度も足を運んで素材を見る中で、雪ヶ峰牧場の希少なジャージー牛、そして、そのミルクを使って菓子を製造する株式会社スウィーツに出会いました。「いいものを届けたい」という考えでものづくりに取り組む姿勢に刺激を受けたといいます。

      「全国に知られていない素材や企業の技術が、地方にはたくさんあると実感しました。高知のいいものを探している時間は、地方で宝探しをしているみたいでした。」と振り返ります。

      「しあわせミルクサブレ」の商品開発を担当する大丸松坂屋百貨店のバイヤー・田端優

      高知のものを使って、高知の人がつくることは簡単なように聞こえますが、実はそうではありません。菓子を商品開発する上で、仕入れた素材を菓子に必要なバターなどに自社で加工できる企業はそう多くないといいます。素材を仕入れた後は他社で加工してもらうのが一般的で、地域にその技術を持った企業がない場合は県外の会社に頼むことになります。「オール高知」で商品開発をすることはとても難しいことでした。

      商品開発を担当した大丸松坂屋百貨店のバイヤー・田端優は「株式会社スウィーツでは、原料となるジャージー乳を仕入れて自社でミルクパウダーやバターまで加工できる技術がありました。高知にはすごい企業があるなと驚きました」と話します。「オール高知」でつくるサブレを実現できたのは、生産者と地元企業の技術があったからでした。

      「雪ヶ峰牧場」という素材の原点

      ジャージー牛がのびのびと過ごす雪ヶ峰牧場

      高知県香美市の町外れ、山と川に囲まれた自然豊かな場所にある雪ヶ峰牧場。120へクタール(東京ドーム25倍分)もの広大な土地に、僅か70頭のジャージー牛が一年中昼も夜も放し飼いされています。牛たちが木陰で休んだり、青草の新芽を食べたり、のびのびと過ごす姿から、「日本一幸せな牛がいる牧場」とも言われています。

      牛が草を食べたり、歩いたりすることで自然とできた道。

      ジャージー牛は一般的な乳牛のホルスタイン牛に比べ、飼育頭数が全国的に少なく、全体の1%未満です。体が小さく搾乳量も少ないため、牛乳の大量生産には向いていない品種でもあります。それでも、雪ヶ峰牧場がジャージー牛の飼育にこだわるのは、ジャージー牛のミルクのおいしさに理由があります。

      ジャージー乳は濃厚でコクがあり、栄養価が高いのが特徴。搾乳量が少なく高価なことから、かつてはイギリスの王室や貴族達紅茶のミルクとして親しまれていたといいます。雪ヶ峰牧場ではよりおいしいミルクを追求し、一年中昼も夜も放牧し、元気な青草の新芽を食べさせることで、より風味のいいミルクを引き出しています。

      牧場長の野村泰弘さん

      雪ヶ峰牧場がある場所はもともと山林で、牧場長の野村泰弘さんのお父さん・真一さんがひとりで広大な土地を切り開くところから始まりました。木をひとつひとつ根っこから取り除く作業は、簡単にできることではありません。それだけではなく、良質な牧草を育てるために広大な牧場の土を1m以上も掘り起こして土壌改良までしたといいます。ジャージー牛のミルクのおいしさを信じて取り組む姿勢からは、高知の方言で気骨のある男性を意味する「いごっそう」気質が感じ取れます。

      高知県でジャージー牛を育てているのは雪ヶ峰牧場ただひとつだけ。それを実現できたのは、「ジャージー乳のおいしさを知ってほしい」という野村さんの想いが根底にありました。

      ギュッギュッと草を食べる音が聞こえてきます。

      牛舎での飼育が一般的な中、雪ヶ峰牧場では一年を通して昼も夜も放し飼いをしています。牛たちは一日の中でも、時間帯ごとに広大な牧場を移動して草を食べて過ごします。「放牧なので牛たちは敷地内を好きなように動きます。ミルクでお腹が張ってくると、自分で歩いて搾乳してもらいに小屋までやって来ます。」と、野村さんは話します。豊かな自然の中でのびのびと育つ、雪ヶ峰牧場ならではの風景です。

      搾乳のために牛たちは自分で小屋までやってくるそう。

      牛たちは牧場の山を歩き回り、自生する草を食べています。やがて、牛たちの排泄物が山の肥料となり、新しい草を育てます。放牧によって、牛と山が支え合う自然の循環が生まれているのは、雪ヶ峰牧場だからできることです。こうした牛に寄り添った環境が幸せなミルクを生み出しています。

      “素材の声を聴いて、かたちにする”——株式会社スウィーツの職人たち

      左から、田端、株式会社スウィーツの埜口英一代表取締役副社長、「しあわせミルクサブレ」の商品開発を担当した濵口純矢さん。

      株式会社スウィーツは、雪ヶ峰牧場のジャージー乳を使ったアイスブリュレなどで定評のある菓子メーカーです。「素材の持つ物語をスウィーツを通して伝え、産業化し、地域貢献する。」という企業理念のもと、地域にある素材の良さを引き出すよう心がけているのだとか。

      株式会社スウィーツの埜口英一代表取締役副社長

      「しあわせミルクサブレ」を作るにあたり、ジャージー乳の魅力を存分に引き出すために100回を超える試作を行ったそう。生地の小麦粉と米粉の割合を調整してホロホロ食感に磨きをかけ、口どけのよさを追求しました。さらに、サブレにミルクパウダーをかけることで、ミルクの風味が際立つように香りづけしました。

      代表取締役副社長の埜口英一さんは「雪ヶ峰牧場のミルクはこの地域だけのオンリーワンな素材。そのおいしさをサブレで表現するために、何度もチャレンジしました。こうした挑戦が新しい発見につながります。」と話します。

      ほろほろとほどけるような食感! 優しいミルクの風味にこだわった「しあわせミルクサブレ」

      「しあわせミルクサブレ」は、ほろほろとほどけるような口どけの生地にミルクパウダーがかかり、ジャージー乳の味わいを存分に楽しめる商品です。雪ヶ峰牧場の牛がのびのびと自然の中で育つ姿から、優しさとジャージー乳のおいしさをサブレで表現しました。

      「しあわせミルクサブレ」の商品開発を担当した、株式会社スウィーツの濵口純矢さん。

      商品開発に携わった濵口さんは「最初の一口でミルクの味わいを楽しんでもらえるよう、甘さを控えてミルクの風味を引き出しました。ジャージー乳の味わいを存分に楽しめるサブレです。」と話します。

      高知の素材を使って、高知の人がつくる「オール高知」で生み出した「しあわせミルクサブレ」は、こうした地元の人たちの努力があって完成しました。

      「この土地の価値を、“ひとくち”に込める」、そんな想いで出来上がった「しあわせミルクサブレ」。雪ヶ峰牧場でのびのびと育つジャージー牛の物語も含めてお楽しみください。

       

      「しあわせミルクサブレ」についての詳細はこちら
      https://think-local.dmdepart.jp/information/20250829/

      後編につづく!

      後編では、高知のいいものが詰まった「しあわせミルクサブレ」のおいしさを伝えるためのもうひとつの魅力であるパッケージについてお届けします。パッケージのデザインを手がけた、高知在住の人気絵本作家・柴田ケイコさんにお話を伺います。