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ISHIYAが挑む新ブランド「AGREETS」誕生の舞台裏。 〜名物バイヤー・本田大助が語る、“地域と百貨店の新しい関係”〜

ISHIYAが挑む新ブランド「AGREETS」誕生の舞台裏。 〜名物バイヤー・本田大助が語る、“地域と百貨店の新しい関係”〜

北海道札幌市

    2025.12.09 (Tue)

    目次

      北海道土産として有名な「白い恋人」で知られるISHIYAによる、北海道の未来と一次産業を応援する新ブランド「AGREETS(アグリーツ)」。2025年に始まったこのブランドが生まれた背景とは? そして、第1弾の製品となる「おさつマロ」とは? このプロジェクトの発起人ともいえる、大丸松坂屋百貨店の名物バイヤー・本田大助とともにISHIYAを訪ね話を伺いました。

      北海道物産展の“名物バイヤー”が見つめてきたローカルの今

      長年、物産展で活躍してきた大丸松坂屋百貨店の本田大助は、22年前に北海道に来て以来、全道にあるさまざまな生産地を巡り現場主義を貫いてきました。

      北海道展をはじめ、商品開発などを担当する大丸松坂屋百貨店のバイヤー・本田大助。

      「北海道は食材、素材が日本の中でもトップクラスだと感じています。そして、商品をお客様に届ける上で大事なのは“現場主義”。農家の方と直接話すことで、初めて食材の後ろにある物語が見えてくる。そのストーリーを大切にして、商品と共にお客様にお伝えしています。」と活動の原点について語ります。

      その北海道の“食”の環境が、近年の温暖化の影響で変化しつつある現状を見た本田は「ジャガイモが主流のこの大地で、5年後の定番(ニューノーマル)となる農産物は何か?」という問いを立て、すぐさまその答えを出すべく行動を開始します。

      由仁町と栗山町で生まれたさつまいも「由栗いも」。

      彼が着目したのが“サツマイモ”。そのアイディアの種は、本田が2018年に由仁町・栗山町で出会った、土の中でゆっくり寝かせることでしっとりとした食感になる「由栗いも(ゆっくりいも)」でした。

      「この由栗いもを主役に、北海道の素材の魅力を知ってもらえる新しいお土産をつくれたら最高ではないかと思い、相談したのがISHIYAさんでした。」と、本田はプロジェクトのきっかけを振り返ります。

      ISHIYAとの出会い―“同じ方向を見ていた”二つの想い

      プロジェクトのパートナーとしてISHIYAを選んだのは、ISHIYAが掲げる「100年先も北海道に愛される会社へ」という理念が、本田の「北海道の未来を応援したい」という想いと重なり合っていたからです。

      今年で開業30周年を迎える「白い恋人パーク」。

      「我々は『Stand by Hokkaido』という言葉を掲げ、北海道に寄り添い、広めることを目指しています。本田さんの今まで数多くの商品を開発してきた知見、生産者の方との繋がりと、我々の菓子製造ノウハウを掛け合わせることで、この北海道に寄り添った取り組みを、全国に広めていくことができると確信しました。」と話してくれたのが、ISHIYAの販売部ゼネラルマネージャー・ 高橋洋介さん。この協力によって生まれる大きな成果に高橋さんも期待を寄せたそうです。

      ISHIYAの販売部ゼネラルマネージャー・高橋洋介さん。

      本田が想う“未来への着眼点”と、ISHIYAが持つクリエイティビティ。新しいブランド「AGREETS」は、信念とクリエイティブの共鳴によって誕生した、百貨店とメーカーの枠を超えた取り組みとなりました。

      新ブランド「AGREETS」が目指すもの

      ISHIYAの新ブランド「AGREETS」。

      新ブランド「AGREETS」という名前には本田とISHIYAが北海道の未来へ向けて掲げた三つの想いが込められています。

      一つ目は「AGRI + SWEETS」。つまり農業とお菓子のしあわせな出会い。二つ目は「AGRI + MEETS」。お菓子を通して、人の出会いの場面を豊かにしていくこと。そして、三つ目は「AGRI + AGREE」。北海道の農業へ賛同し、同意し、味方していくという意思表示です。

      「この三つの想いの集合体こそが、AGREETSです。北海道の生産者と共に歩み、その活動を支えていくという強い信念で、百貨店とメーカーが心を一つにし、その想いを形にしたブランドなのです。」と高橋さんは語ります。

      「白い恋人パーク」内でブランド創設当時を振り返る高橋さん。

      AGREETSが目指すのは、気候変動を見据えた“ニューノーマルな食材”を主役にし、北海道の生産者の方々の想いごと全国へ届けるという、「Stand by Hokkaido」を具現化することなのです。

      第1弾商品「おさつマロ」誕生ストーリー

      AGREETSがリリースする一つ目の商品「おさつマロ」の最大の挑戦は、味はもちろんのこと、新鮮な食感でした。由仁町・栗山町産の「由栗いも」の物語を伝えるための、「かりっ、ふわっ、とろっ」という三つの食感の実現が、ISHIYAの技術チームに求められたのです。

      由栗いもの可能性を最大限に引き出した「おさつマロ」。一度に四つの食感が楽しめる。

      「サツマイモスイーツは世の中にたくさんありますが、新しさを出すため、ホワイトチョコのなめらかで心地よい口当たり、マシュマロのもっちり感、由栗いもペーストのしっとり感、アーモンドのカリッと感。この四つの食感が一体となる、新しいお菓子を開発しました」と、本田は狙いを説明します。

      完成までに約8ヶ月間。約13回の試作を重ねられたそう。

      マシュマロの最適な弾力と口溶けを実現するため、最高のマシュマロを提供してくれる外部供給先を探したそうですが当初は見つからず。開発・試作段階ではISHIYAは自社製造を決断。職人による試作を重ね、このお菓子に最適化された「もちっとした弾力と心地よい口溶け」を持つマシュマロを完成させたのだとか。その後、なんとかISHIYAの理想を体現できる外部供給先と出会うことができ、製品化に至ることができたそうです。

      また、解消することが難しいと思われた“時間が経つと由栗いもペーストのしっとり感が失われたり、食感が崩れたりしてしまう問題”に対しても、ISHIYAの開発チームは今まで培ってきた技術をもとに、試行錯誤の末、見事解消させます。

      最もこだわったマシュマロは「おさつマロ」に最適化された弾力と口溶けが魅力。

      また、「白い恋人」に使われるホワイトチョコレートはあえて「おさつマロ」には採用していないのだとか。高橋さんいわく「サツマイモの甘さを邪魔しないよう、このお菓子に最もバランスが良いものを数あるホワイトチョコレートの中から選びました。サツマイモよりも甘いと、せっかくの『由栗いも』の風味が消えてしまうからです。」と開発の裏側を明かしてくれました。

      “売る”から“共創する”へ。地域メーカーとタッグを組む意義とは?

      時には畑に、時には海に。北海道内各地の現場に足を運び、北海道の食材を見つけてくる本田。

      AGREETSプロジェクトの成功は、百貨店としての立場を超え、メーカーと“共創する”というスタンス自体だったと本田は言います。

      「単にお菓子を売りたいわけではなく、お菓子を通じて生産者の方を応援し、北海道の魅力を全国に広めていきたい」と語るように、このプロジェクトの核心は、大丸松坂屋百貨店がISHIYAという一流メーカーとタッグを組み、ゼロから新しい価値を創出した点にあるのです。

      AGREETSのキャラクター。両手でもつ苗の部分は、「おさつマロ」のパッケージでは「由栗いも」になっている。今後も商品に合わせて手に持つ食材が変わっていく予定。

      「おさつマロ」はAGREETSの始まりに過ぎません。本田と高橋さんが見据えるのは、北海道の豊かな農産物を主役にした、次の展開です。

      「第2弾も『由栗いも』を継続して使用したスイーツを構想しており、来年の発売を目指しています。その後、トウモロコシやカボチャなど、各季節の旬の北海道の素材をもとに、商品を展開していくことを構想しています。」と本田は最後に語りました。

      AGREETS

      公式ウェブサイト(外部サイトへ移動します)https://www.ishiya.co.jp/agreets/

      「おさつマロ」販売情報

      大丸神戸店「秋の北海道展」

      日時:2025年12月10日(水)~2025年12月22日(月)10:00〜19:00 ※最終日は18:00まで
      場所:大丸神戸店 9階 イベントホールhttps://www.daimaru.co.jp/kobe/topics/20251125_hokkaido.html

      大丸札幌店

      日時:2025年12月10日(水)~2025年12月14日(日)10:00~20:00
      場所:大丸札幌店 地1階 ほっぺタウン催事場https://www.daimaru.co.jp/sapporo/hoppetown/

      松坂屋上野店「北海道物産展」

      日時:2025年12月12日(金)~2025年12月30日(火)10:00〜19:00 ※最終日は17:00まで
      場所:松坂屋上野店 6階 催事場https://www.matsuzakaya.co.jp/ueno/topics/251212_hokkaidobussanten.html