STORY
限界集落・利賀村の「幻の果実」さるなしをマカロンに。

限界集落・利賀村の「幻の果実」さるなしをマカロンに。

富山県南砺市

    2023.01.31 (Tue)

    目次

      富山県南砺市の山奥にある「利賀村」。人里離れたところにあり、限界集落と呼ばれる人口450人ほどの小さな村ですが、この村の豊かな自然と、親しみやすい人々に魅力を感じ、盛り上げようと尽力している若者たちがいます。さまざまな活動をする慶應義塾大学の「利賀プロジェクト」では、特産物のさるなしを使ったスイーツを開発・商品化。彼らの熱意の源と、それに動かされた人々の想いをうかがいました。

      自然豊かな富山の“限界集落”利賀村

      利賀村は、標高400〜750mのところにあり、面積の約97%が森林である自然豊かな場所。富山市内からでも車で1時間ほどかかる山奥です。

      日本中のあらゆる地方と同じく、人口減少や高齢化は避けられず、現在は450人が暮らしています。人がアクセスしづらい場所であるゆえに、圧倒的に豊かな自然がそこにはあります。

      利賀村に住み、利賀村をよく知る、南砺市商工会利賀村事務所の齊藤嘉久さんいわく、「山にへばりついた村、ともいえますね。」

      南砺市商工会利賀村事務所の齊藤嘉久さん

      利賀村には、利賀川と百瀬川という雪解け水が流れる2つの清流があります。水の綺麗な環境ゆえに、山菜などが自生する豊かな自然が魅力です。

      しかし、人口の半分以上が高齢者の「限界集落」であることが広く知られています。山奥の田舎で閉鎖的なコミュニティーかと思いきや、訪れる人にはかなりフレンドリーなのだとか。このことは、利賀村では昔からご近所同士で助け合わないと生きていけない環境が関係しているようです。

      利賀村プロジェクト 通称「トガプロ」

      利賀プロジェクト、通称「トガプロ」は、利賀村をフィールドとしてさまざまな活動を行うプロジェクトです。学生が自由に考えて活動することを目的とし、2011年に慶應義塾大学内のゼミである牛島利明研究会(以降、牛島ゼミ)のメンバーによって始まりました。

      トガプロの森万紗樹さん(左)内海花菜さん(中)西森菖さん(右)

      2011年、当時の牛島ゼミの学生が新たに活動するフィールドを探している際に、学生自身で企画を考え自由に活動できる環境が整っている利賀村に出会いました。地域おこしに関わりたい若者と、過疎化に危機意識を持っていた利賀村の人々が出会い、「利賀プロジェクト」通称トガプロが発足します。

      発足から12年目を迎えようとする現在も、3年生と4年生のメンバー総勢14人で活発に活動を続けています。利賀村の人々と一緒に村で行われる行事を盛り上げたり、資源を活用したプロジェクトの企画をしたり、トガプロの活動は多岐に渡ります。

      特産品「さるなし」を世に広めたい!

      トガプロのメンバーが昨年から力を入れているのが特産品を活用した商品の開発でした。

      「ある日、利賀村の野原さんという『さるなし』の生産者の方に紹介してもらったんです。さるなしは、別名『ベビーキウイ』とも呼ばれる果物で、標高600m以上の山岳地域にのみ自生するんですが、それが利賀村にはたくさんあったのにあまり活用されていない。これはどうにかしたいということでトガプロでも村の人々と会話をしてプロジェクトが始まりました。」(西森さん)

      さるなしは秋が旬とされています。あまりの美味しさに、猿が全部食べてなくなってしまうことから「さるなし」という名前がつきました。

      富山県民でもさるなしの存在を知る人は少なく、もちろん食べたことがある人も多くはありません。その希少性から「幻の果実」と呼ばれることも。

      見た目は小さく少し縦長で、赤くなる前のミニトマトのようですが、カットした時の断面や味はキウイフルーツに似ています。栄養価が非常に高く、さるなしにはビタミンCが豊富に含まれるとされていて、知れば知るほど魅力的な果物であるさるなしを、多くの人に届けられる商品にしたいとトガプロでは企画会議を重ねていきました。

      お酒やドレッシング、入浴剤などさまざまなアイデアがあったものの、さるなしの魅力を引き出し、日常的に楽しめて、特産品になるという観点から、さるなしをスイーツにするということで企画が定まりました。

      さるなしを多くの人に知ってもらうために、どのような伝え方をすればいいか、さるなしをスイーツにすると決まってから、トガプロメンバーはこの課題と向き合いました。

      「『幻の果実』と呼ばれる、さるなしのキャッチーさが面白いと思いました。レア感や希少性を前面に打ち出すことで、さるなしという馴染みのない果物に振り向いてもらえるのではないかと考えたんですよね。」(西森さん)

      “未知のものと出会いたい”「ムッシュー・ジー」によってプロフェッショナルの商品に

      トガプロメンバーが、さるなしの商品化を手伝ってくれるお店を探していたところ、富山の有名店であるムッシュー・ジーに知り合いを介して出会うことができました。

      ムッシュー・ジーは、富山市内に店舗を構えるマカロン・フランス菓子専門店です。本場フランスの感性と日本の地方で採れる素材とのコラボレーションを行い、新しいスイーツを作りあげることをコンセプトとしています。

      パティシエであるジョスラン・ランボさんと、一緒にお店を営むランボ乃理子さんは「これまで使ったことのない食材に出会えることをいつも楽しみにしているんですよ。」と笑顔で語ってくれました。学生たちから届いた、さるなしをスイーツにするプロジェクトのオファーを迷うことなく引き受けたおふたり。利賀村のさるなしは、ムッシュー・ジーがマカロンに商品化することが決まりました。

      ジョスランさんは、今回のプロジェクトを通して初めて、さるなしの存在を知ったとのこと。見知らぬ味と出会う楽しみはあるものの、マカロンという繊細なお菓子に、未知の味を取り入れ、それを多くの人に届ける商品というレベルまで高めていくのは簡単なことではありませんでした。

      「ムッシュー・ジーのマカロン作りでは、主に3つの要素を大切にしています。1つ目は、クリームに情熱を込めること。2つ目は、フルーツの特性を活かすこと。そして、3つ目は、口に入れたときの味・食感など全体のバランスがいいことです。さるなしは、クリームにするのが大変でしたね。」(ジョスランさん)

      振り返ると「結構やったよね!?」と夫婦で顔を見合わせ、苦笑いする場面も。どうしてもさるなし特有のえぐみが消えず、苦労したのだそうです。

      最終的にジョスランさんは、味が似ているキウイフルーツと合うフルーツから着想し、バナナを使用をしてみて活路を見出しました。さるなしの酸味と香りに、バナナのまろやかな甘みや食感を加えることで、3つ目の要素である全体のバランスのよさも叶えました。

      「バナナを加えてしまったらさるなしの味が消えてしまうのでは?と思ったんですが、試食してみて、感動しました。バナナはさるなしを引き立ててくれているし、これがプロの仕事なんだなと、ちょっとでも『え?』と思った自分を反省です(笑)。」(森さん)

      実際にお客様にお渡ししているポストカード

      プロジェクト全員が満足できる味を、より多くの人に届けるため、トガプロメンバーがデザインしたポストカードを、さるなしマカロンの販売店舗に設置しました。さるなしが「幻の果実」と呼ばれる理由や、利賀村の人々とトガプロメンバーのさるなしへの想いを伝える動画のURLを記載しています。さらに、このポストカードは、切手を貼って利賀村へ送ることができる仕様になっているのです…!こうして、生産者の野原さんをはじめ利賀村の人々とさるなしマカロンを手に取った人々との間にできる接点は、何ものにも変え難い特別なものです。

      「ずっと関わり続けていきたい」と思える、富山・利賀村の魅力

      牛島ゼミの学生は、数ヶ月に一度利賀村にやってきて、数日間にわたりこの村で過ごします。普段東京で学生生活を送る彼らにとって、利賀村は簡単に来られる距離ではありません。それでも強制されているわけでもなく、ノルマがあるわけでもないのに足繁く利賀村に通っています。

      「利賀村のことは、第二のふるさとのように思っていて、何回でも訪れたくなる場所なんです。滞在先のご近所さんや、村の中でたまたま出会った人が、何かしら話しかけてくれて、世話を焼いてくれる。それに甘えたり、逆に何かを今度は手伝ったり。そういうのがシンプルに楽しいんです。」(内海さん)

      利賀村には、山奥の村にある閉鎖的なイメージとはまったく異なる価値観が根付いています。

      「利賀村は、冬には3m以上の高さまで雪が積もるんですよ。だから、本当は米や穀物を育てて、それを備蓄して冬は籠らなきゃいけませんよね。でも標高が高くて米が育ちにくいんです。なので、誰かに頼ったり、助け合うということは利賀村の人々にとっては“生き抜くための当たり前”。それが風土として根付いているんだと私は思いますよ。いい意味でおせっかい、世話好きの人たちが多いですから。」(齊藤さん)

      すっかり村のお年寄りたちと仲良くなった学生たちも、笑顔で頷きます。

      「それに、東京とは違って、利賀村では四季の移り変わりが目に見えてわかるんですよ。なめこの菌植えをしたりグラウンドを起こしたり、“季節が変わるとやること”は、僕らにとってはアクティビティー。村の暮らしに寄り添っていろんなことを体験できるのがすごく楽しいんです。」(森さん)

      プロジェクトの未来と、利賀村のこれから

      今後も、牛島ゼミの学生に引き継がれ、トガプロは活動を続けていきます。今回お話をうかがった現メンバーの3人、そして利賀村の齊藤さんとの間には、相互に継続して関わっていきたいという強い想いと、揺るぎない信頼関係があるようです。

      村で行われるイベントを盛り上げるためのアプローチや、豊かな自然を活かした特産品の開発を、学生ならではの視点と発信力で継続していきます。

      「学生の時の活動、というよりは大学を卒業してからも関わっていきたいんです。個人として、利賀村にはずっと通うと思います。」(森さん)

      定期的に利賀村を訪れ、村のイベントに参加し続ける卒業生は多いそう。限界集落と呼ばれる利賀村ですが、そのあたたかい関係人口は増え続けていきそう。東京の学生と富山の山奥に住む人々との出会いから生まれる新しいアイデアに、今後も要注目です。

       

      Think LOCAL Magazineでは、このSTORYに共感し、多くの人にお届けするため、さるなしマカロンの販売をすることになりました。ぜひ利賀村の魅力がつまったマカロン、お召し上がりください。

      ご当地&人気マカロン10種セット

      税込 5,400円

      送料込み

      ムッシュー・ジー(外部リンクに移動します。)
      https://www.monsieurj-patisserie.com/
      〒930-0083
      富山県富山市総曲輪4-10-9 1F
      営業時間:10時〜18時
      定休日:月曜、火曜

      利賀プロジェクト(外部リンクに移動します。)
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