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福岡・東京。2拠点で物語を紡ぐ「アマムダコタン」の現在地

福岡・東京。2拠点で物語を紡ぐ「アマムダコタン」の現在地

福岡県福岡市

    2023.03.29 (Wed)

    目次

    2020年日本中に「マリトッツォ」旋風を巻き起こした福岡・六本松に拠点を置くベーカリー「アマムダコタン」。全国に「福岡発ベーカリー」として名を轟かせ、今や海外からもわざわざ訪れる価値のあるお店として知られています。現在では「アマムダコタン」の名前を冠するのは福岡・六本松店と東京・表参道店の2店舗。この2拠点で物語を紡ぐブランドの今をうかがいました。

    福岡・六本松店からはじまった、濃密な世界観

    福岡市・六本松。2009年までは九州大学のキャンパスがあり、学生街というイメージが強かったものの、現在ではその跡地に大型商業施設や高層マンションができるなど、再開発が進みファミリー層にも人気のエリアとなりました。一方で、大通りから一本路地に入ると小さな商店や飲食店が並んでいるなど、昔ながらの学生街の名残がうかがえます。

    そんなエリアに2018年11月にオープンしたのが「アマムダコタン(AMAM DACOTAN)」。福岡市内で人気を博していたイタリアンレストラン「ヒラコンシェ」の平子良太シェフがパンの名店「パンストック」とコラボして誕生したベーカリーです。
    アマムダコタンは「料理人がつくる惣菜パン」で一気にその名を広めました。味はもちろんのことですが、最大の特徴はやはり、店内に足を踏み入れた時に目の前に広がる“世界”です。

    五感で感じるのは、幼い頃に絵本で見た、あのパン屋さん

    アマムダコタンのテーマは「石の町にある小さなパン屋さん」。幼い頃に絵本で見た架空のパン屋さんをモチーフにしているそう。

    店内でまず目に飛び込んでくるのはこだわり抜いた内装です。石を多用した柱や壁に、流木やドライフラワーなどが絡まる什器。可愛いアンティーク調の調度品が効いており、まさに絵本の世界に入り込んだような素敵な世界観です。

    そして圧巻はその商品のラインアップです。常時120種類ほどはあるという目にも鮮やかな惣菜パン。端から端まで美しい芸術品のようなパンが並ぶさまはまさに絶景と呼んでも良さそうです。陳列の仕方にもこだわりがあり、高さもいろいろなので思わず見渡してしまいます。見て回るだけでも楽しくなってしまう仕掛けが小さな店内のあちこちにあるのです。

    カラフルなパンたちの陳列の向こうには、スタッフの方がパンを焼く姿が見えます。リアルタイムで商品が生まれていくライブ感と、漂ってくるパンの焼ける香りが、物語にリアリティーを持たせてくれるようです。

    「空間を楽しむ」のがアマムダコタンの物語

    行列の先頭に並んでいたお客様にお話を聞くと、よく通っているという地元の方でした。
    「季節だけでなく、時間によっても焼き上がる商品が違うので、毎回来るのが楽しみ。新商品などをSNSで発信してくれるので、お目当ての商品もありますし、待っている時間も楽しいんです。それから、何回来ても写真を撮ってしまうんですよね(笑)。」と笑顔で教えてくださいました。

    「わざわざ出向いてくれるお客様、長い時間待ってくれたお客様が店内に入った瞬間に笑顔を見せてくれるのは本当にうれしい瞬間です。こだわりの内装や華やかなパンを見て、焼きたてのいい香りに触れて、その空間を楽しんでほしい。これって、実は世界共通だと思うんです。」と話すのは、六本松店店長の川口さん。

    「福岡はアジア圏の観光客の方も多いんです。日本語が話せなくても、五感で楽しめるアマムダコタンの良さはご理解いただいてるようです。」

    アマムダコタンのパンや系列カフェなどを求めて若い女性が増えた六本松。時を同じくして、周辺には小さなカフェやショップが増えてきたそうです。
    「せっかく六本松に来てもらっているので、アマムダコタンだけでなく、路地裏の小さなお店巡りなども楽しんでほしいですね。」

    坂道や裏路地を迷いながら歩くのも、物語の続きのよう。アマムダコタンの世界に触れた後はその余韻を感じながら、路地裏を探検するのがおすすめです。

    アマムダコタン
    住所:福岡県福岡市中央区六本松 3-7-6

    公式Instagram(外部へ移動します。):https://www.instagram.com/amam_dacotan/?hl=ja 

    東京・表参道店でも極上の物語を体験

    福岡・六本松で爆発的な人気を誇っているアマムダコタンですが、2021年の10月には待望の東京進出を果たしました。東京で人気の店舗が地方に進出することは多いですが、福岡で人気のお店が満を持して東京に出店するという形は珍しく、多くのパン好きやカフェフリークの間で話題に。あっという間に平日でも行列の絶えない人気店となったのです。

    オープンしたのは、東京・表参道のなかでも海外から来たショップやカフェ、ギャラリーが集中するエリア。徒歩数分以内には、同じく最近オープンした人気のカフェやベーカリーが近接する、いわば激戦区です。

    しかし、表参道でもぶれずに「アマムダコタン」の世界が展開されています。蔦や枯れ木、籠などを多用した店内のインテリアは、六本松店と同様に私たちに高揚感をくれます。

    ハイセンスな内装の中にあっても映える、極上のパンやペイストリーたちは、アマムダコタンの空間に華やかさをプラスします。

    六本松店とは店の構造など細かい点は違えど、一歩店内に入れば、まるで絵本の中に入り込んだような同じ「アマムダコタン」の物語が広がっているのです。何度訪れても違う楽しみがあるその世界には、多くの人が虜になっています。

    ローカライズされながら、拡大する物語

    広報を担当する岩本さんは、もともと六本松店で勤務していたのだそう。どちらのお店でもアマムダコタンの物語を日々体現している岩本さんから見ると、どちらのお店も同じアマムダコタンの物語でありながら、目の前のお客様には少し違いがあるようです。

    「どちらかというと、表参道店の方が“おでかけ”してくる方、六本松店は“地元”の方が多い印象です。なので、表参道店はそこに合わせて少し商品も変えています。例えば、同じ商品でも少しトッピングをリッチにしてハレ仕様に。少し値段は張りますが、求められているものは微妙に違うなと感じますね。逆に、六本松店はもう少しデイリーで求めやすいものを。お客様のニーズに細かく合わせることで、『美味しい』以外の満足度も上げていきたいです。」

    行く度に新しい感動を与えてくれるアマムダコタンは、実はほとんどのお客様がリピーターであるということが満足度の高さを物語っています。

    東京進出の後は、日本の各地に出店するなどして一気に事業拡大をしていくのが一般的な店舗展開ですが、アマムダコタンは今の所、この2拠点で濃密な物語を紡いでいくことを中心にしていくそうです。

    「物語が、美味しさを加速させる」。岩本さんがそう教えてくれた言葉はまさに私たちの「アマムダコタン体験」でした。それぞれの街で、アマムダコタンの世界観は今日も人々を魅了し続けています。

    アマムダコタン 表参道店
    住所:東京都渋谷区北青山 3-7-6

    公式Instagram(外部へ移動します。):https://www.instagram.com/amam.dacotan/