北海道北広島市
2023.04.21 (Fri)
目次
“世界がまだ見ぬボールパーク”として誕生した「北海道ボールパークFビレッジ」。
従来の球場づくりの概念を超え、新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」を中核とした新しい地域コミュニティの創造を目指す、壮大なまちづくりプロジェクトが北海道で始まろうとしています。
北海道日本ハムファイターズの新球場として、2023年3月30日に北海道北広島市で開業した、「北海道ボールパークFビレッジ」「エスコンフィールドHOKKAIDO」。このボールパーク構想は、北広島市の地に「新しい地域コミュニティ・まち」を創造する壮大な地域貢献プロジェクトであり、パートナー企業と共同で付加価値の高いサービスを開発する共同創造プロジェクトでもあります。今回は、ボールパークの保有・運営をするファイターズ スポーツ&エンターテイメント(以下:FSE)の統括部長である小林兼さんに、ローカル起点で始まったボールパークづくりへの想いをうかがい、新しい地域コミュニティ・まちの在り方を提唱する北海道のローカル活動(新しい北海道の魅力)をご紹介します。
小林さんは、大学卒業後は銀行員として働き、シンガポールやタイなど、東南アジアが中心の海外勤務が長かったのだとか。そんな中、北海道一大プロジェクトであるボールパークの中途採用をニュースで見て応募に至ったそう。
「気軽な気持ちで応募したのですが、話していくうちに、野球チームだけではなく異業種の企業、地域の住民、行政、含めてみんなで価値ある『共同創造空間』を作っていこう!という北海道ボールパークFビレッジが掲げているコンセプトに共感しました。また、日本の地方都市は、少子高齢化や過疎化、資金減などの問題を抱えています。北海道ボールパークFビレッジがある北広島市もその1つ。自身が培ってきた経験を活かし、あらゆる問題を打破する地方都市のモデルケースを作れるのではないか、と思いました。」と小林さん。
共同創造空間の実現に向け、“北海道の価値×スポーツの価値”を組み合わせたプロジェクトが始動。小林さんは『このプロジェクトがうまくいくか、いかないか』と元銀行員の目線でシビアに考察。その上で、北海道の魅力を北海道ボールパークFビレッジで体験できる、という理想としても美しく、筋の通ったプロジェクトだと確信したそう。
ただ、理想を具現化していくにあたっては、自社だけではなくパートナー企業の協力が不可欠です。
「プロジェクト始動にあたって、正直難しいことだらけでした。ですが、理念がしっかりしているプロジェクトだったので、単純に企業パートナーとタイアップではなく、お互いが掲げている理念にお互いが理解し共感すること、そしてWin=Winな関係に繋がることが大切だと考え、各企業にアプローチしました。」
小林さんは相手方となるパートナー企業の理念・情報を余すことなく詳しく調べ、北海道ボールパークFビレッジでパートナーとして一緒に『やりたいこと・やれること』のロジックを組み、企業へ直接足を運びアプローチしていきます。1つ1つを丁寧に、確実に行い、最終的に多くの企業の心を掴むことができたのは、小林さんが長年培ってきた銀行員としてのコミュニケーション能力や経験が役に立ったのだそう。
Fビレッジ内の「THE LODGE(ザ・ロッジ)」は、小林さんの想いが詰まった施設の1つ。
その中には株式会社ゴールドウィンが運営している人気アウトドアブランドのTHE NORTH FACE直営店があります。ここでは商品の販売だけではなく、自然を楽しみ、アクティブな余暇スタイルを提案する次世代向けのワークショップの開催が予定されています。
同じく「THE LODGE」にある、北海道初進出のいちごスイーツ専門店「ICHIBIKO」。「子供も大人もそろって笑顔になれる、甘くてしあわせなひととき」を提供したいというこのお店では、「食べる宝石」と言われている最高品質のミガキイチゴなどを使用して、みんなで楽しめる創意工夫にあふれたスイーツを提供しています。Fビレッジ限定のスイーツもそうした想いを込めて生み出されました。
一般市民を巻きこんださまざまな取り組みもプロジェクトの特徴の1つです。
自分の名前や誕生日を彫刻したレンガを購入し、施設内に敷設できる「THE BRICK」というプロジェクトは、開業前に募集され、すぐに完売しました。このレンガは北海道遺産でもある「江別のれんが」を使用。購入者は、ファイターズの選手や著名人らのレンガと一緒にエスコンフィールドの1塁側エントランス前広場、FIGHTERS LEGENDS SQUAREに敷設されます。一般市民も、選手も、アンバサダーたちも同じ場所にクレジットされるという粋な計らいです。
さらに北広島市民を中心に好評なのが「ガーデンサポーター」。Fビレッジガーデンにある草木の管理・運営を行うボランティアスタッフを募集。できることで協力したい、という市民の声が集まり、こちらの募集も定員を上回る勢い。北広島市民の応募が多かったそうですが、隣町の恵庭市や札幌市、東京都や沖縄県からも応募があったのだとか。
また、道外の方へは「旅先納税(※)」を導入。北海道ボールパークFビレッジへ訪れたときに、その場で北広島市に支援できるシステムです。返礼品として電子商品券「北広島市e街ギフト_きたきた」が発行され、Fビレッジ内各施設で利用が可能。ファイターズ公式戦観戦チケットの購入もできます。
※ふるさと納税の制度を利用し、旅先の自治体へ寄付し応援できる仕組み。
野球だけではない、これまでの発想を大きく覆す「北海道ボールパークFビレッジ」の楽しみ方をご紹介していきましょう。
まずは、北海道に初上陸した「乗馬倶楽部銀座 HOKKAIDO」です。プロのライダーもトレーニングに愛用している、世界最先端の乗馬シミュレーターを導入しています。北海道といえば、名馬の産地でもありますが、実際に乗馬に触れる機会は多くはありません。この場所がそのきっかけになればという想いで開設されました。
さらに、グランピングが楽しめる「BALLPARK TAKIBI TERRACE ALLPAR(オルパ)」では、北海道の食材をBBQで堪能するのはもちろん、ボールパークを眺めながら焚き火を楽しんだりと、ゆったりした時間を過ごせます。また、農業機械メーカーのクボタが建設した「KUBOTA AGRI FRONT」では、北海道の基幹産業の農業をテーマにした体験学習が楽しめます。
他にもキッズパークやアスレチック施設、サイクリングステーションなどなど‥。野球観戦が目的ではなくても、ボールパークで遊ぶ・体験する機会はさまざまにあり、いつでも気軽に訪れて想いの時間を過ごすことができるのです。
小林さんに今の気持ちをおうかがいすると「開業しましたが、まだ道半ば。ここがスタートだと思っています。正直、ホッとするのも束の間。開幕してからの1年間は運営やサービスの部分を改善しつつ、しっかりと足元を固める。そして次のステージへ動き出さないと!という気持ちが大きいです。」と語ります。
特に、北広島市の街づくりという点では始まったばかり。「北広島市はいわゆる寝に帰って来る“ベッドタウン”でした。ですが、北海道ボールパークFビレッジの開業によって、ベッドタウンから住んでいて誇らしくなる“好きな街”になることを目指し、市と連携しながら、さまざまな問題を解消していければと思っています。」と小林さんは強調します。
しかも、小林さんはまちづくりをする以上は市民の目で動きたいと、北広島市に移住しました。「地域と密な交流を大切に、市と連携しながらプロジェクトを進めていきたいですね。」小林さんの想いとともに、北海道ボールパークFビレッジが中核となる、北広島市の “進化”に期待が高まります。