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地域に伴走して新たな価値をつくる。アミューズが山梨県とともに築くエンタメのいま

地域に伴走して新たな価値をつくる。アミューズが山梨県とともに築くエンタメのいま

山梨県南都留郡

    2023.08.30 (Wed)

    目次

    大手芸能プロダクションのアミューズは、2021年7月に東京・渋谷から山梨県の西湖に本社を移転。今年春には、アミューズがプロデュースする体験型アドベンチャー施設「FUJI GATEWAY」を同じ富士山麓の河口湖町にオープンしました。

    大手エンターテインメント企業が、なぜいまローカルへと向かうのか? そこには「地域の人たちに伴走し、ともに地域の新しい魅力や価値をつくり出したい。」という強い思いがあるそうです。

    エンタメ企業が山梨の富士山麓に本社を移転した理由とは

    ※写真提供:アミューズ

    アミューズといえば、人気ミュージシャンやタレント、アスリートが数多く所属する大手芸能事務所であり、映画や舞台製作なども手がける総合エンターテインメント企業です。エンターテインメントの中心地=“東京”というイメージがあるなかで、アミューズが山梨に本社を移転するというニュースは大きな話題となりました。

    なぜアミューズは富士山麓という大自然に新天地を求めたのでしょうか。アミューズのスポーツ&アドベンチャー事業部のシニアスーパーバイザーで、「FUJI GATEWAY」のプロデューサーも務める内藤祐志さんは、その理由についてこう話します。

    向かって左が内藤さん。

    「1978年に設立されたアミューズは、約45年間、アーティストや体験をプロデュースするクリエイティブ集団としてものづくりを行ってきました。ものづくりのためには、私たちの人としての力、いわば人間力を育んでいかなければなりません。自然豊かな場所で五感を研ぎ澄ますにはどこがいいか?そういう視点からフォーカスしたのが、ここ山梨の富士山麓でした。」

    ローカルといっても、富士山麓は東京都心から車で1時間半から2時間程度と交通アクセスがよく、それでいて富士山をはじめ、南アルプス、八ヶ岳、奥秩父といった美しい山々に囲まれています。

    雲の合間から山頂をのぞかせる富士山。

    「山梨の大自然のなかにいると、鳥の声、山の匂い、風の音など、都会では見えなかった景色が見えてきます。また、山梨県には平安時代から約1,000年以上続く富士吉田の織物など、世界に誇るべきコンテンツが多くあります。私たちがものづくりの原点に立ち返り、感性を研ぎ澄ましてプロデュース力をさらに向上させるためには、富士山麓はすごくいい環境だと考えました。」

    点と点を線でつなぎ、山梨の新たな魅力を生み出す

    「人としての力を育む」「プロデュース力をつける」という内藤さんの言葉からもわかるように、アミューズは単に本社機能をローカルに移すために山梨にきたわけではありません。その大きな目的の1つに「地域の人々と一緒にものをつくる」こともありました。

    「豊かな自然や食文化など、山梨には魅力的なコンテンツが数多くありますが、現状ではそうしたコンテンツがバラバラに点在しているんですよね。たとえば山梨はフルーツ王国といわれ、ぶどうや桃などおいしい果物がたくさんありますが、それらは事業者がみんな個々に色々と取り組んでいることが多いです。

    そのバラバラなコンテンツをキュレーションし、点と点を線でつなぐようなハブをつくる。そうすることにより、地域の新たな価値や体験を生み出すことができるのではないか。そう考えてつくったのが体験型アドベンチャー施設の『FUJI GATEWAY』です。」

    FUJI GATEWAYの敷地内にある県内最大級のウッドデッキ。このウッドデッキはDJイベントなどを行う際に客席になるという。

    FUJI GATEWAYにはさまざまなアクティビティーが用意されていますが、そうしたなかでも、地域のハブとなる施設ならではといえるのが「CRUISE CLUB」です。

    これは利用者のニーズに合わせてカスタマイズされたアウトドアプログラムで、地元ガイドだけが知る自然体験や知識をかけ合わせたトレイルハイクやバイシクリングが楽しめるもの。アクティビティ・ディレクターの岩間一成さんはこう話します。

    トレイルハイクで見ることのできる洞窟を案内してくれる岩間さん。

    「地元ガイドたちも、まさに点と点でしかありません。基本的にはそれぞれが自分の仕事をしているだけなんですね。しかし、私たちのCRUISE CLUBでは、バラバラだった地元ガイドをつなぎ、一緒に1つのものをつくっています。こうした点もアミューズが山梨にきた理由のひとつだと思います。」

    じつは、岩間さん自身も以前は地元のガイドでした。岩間さんだけでなく、FUJI GATEWAYのスタッフの多くは県内採用の山梨在住の人たちだそうです。「ここで事業を始めるにあたり、地域の雇用創出も大きなポイントでした。」と内藤さんは話します。

    アミューズが手がけたエンタメ施設「FUJI GATEWAY」

    アミューズとともに、地元企業の富士観光開発、そして大手セレクトショプBEAMSが運営するFUJI GATEWAYは、大きく分けて3つの施設によって構成されています。まず1つめは「CLUB HOUSE」です。カフェ&ラウンジスペースで施設内の醸造所でつくられたクラフトビールを味わえるほか、全国的に有名な山梨ワインやクラフトジン、都留の炭ナッツなど、さまざまな地産の商品を購入することができます。

    向かって左からクラフトジン、クラフトビール、都留の炭ナッツ。

    2つめは富士山の麓に広がるキャンプ場の「CAMP FIELD」。富士山を眺める広大なスペースに、Jリーグでも使われているふかふかの天然芝が敷き詰められ、その広大なサイトを利用できるのは最大でも1日30組という贅沢さです。

    また、ここで醸造されるクラフトビールが飲み放題だったり、地元の職人が熟成させた焚き火用の薪が使い放題だったりとサービスも魅力。そして、レンタルされるテントやタープなどのキャンプ用品は、アミューズとセレクトショップのBEAMSがセレクトしたレアなアイテムばかり。しかも、目の前には富士山がそびえ立っています。

    3つめは家族向けフォレストテーマパークの「富士すばるランド」。富士観光開発が55年間運営する、子どもたちの笑顔で溢れるテーマパークです。2023年10月29日まではアミューズがプロデュースする期間限定の夜イベント「ナイトウォーク〜クライの森と6つの星〜」を楽しむことができます。

    怪しげで幻想的な空間にライトアップされた施設にARキャラクターのピエロが現れ、ゲストがタブレット端末を使ってピエロを封印するミッションをクリアするというもの。

    「ナイトウォーク」は想像していた以上にスリルとドキドキ感があり、このイベントに参加するためだけに東京・八王子から車でFUJI GATEWAYを訪れた家族連れもいました。

    あくまで主役は山梨の自然や事業者。アミューズの挑戦は続く

    多くのアーティストを抱える大手総合エンターテインメント企業が地域を活性化すると聞くと、大規模な音楽フェスを思い浮かべる人も多いかもしれません。

    内藤さんは「地域の人たちが求めているのは、本当にそうした大規模なイベントなのでしょうか?」と疑問を呈します。

    「音楽フェスの主役はアーティストです。一方で、私たちは富士山麓の豊かな自然や地域の事業者さんを主役にし、もっと継続的に地域がもつ価値を世の中に伝えていきたいのです。エンターテインメント企業が関わり、地域に伴走することで、ローカルの潜在的な価値をどんどん生み出し、新たな景色をつくっていく。それが私たちの役割だと思っています。」

    アミューズが富士山麓で手がけているのはFUJI GATEWAYだけではありません。2022年6月には山梨県とアウトドア・アクティビティー、文化・観光などに関する包括連携協定との締結をはじめ、地域事業者や自治体とともに、地域活性化のためにさまざまなプロデュースを行っているそうです。

    FUJI GATEWAYという施設を拠点にして、これからどのようにして地域の新しい価値をつくり出していくのでしょうか。アミューズと地域社会との関わりはまだ始まったばかり──。これからの活動にも目が離せません。

    FUJI GATEWAY(外部サイトに移動します。)https://fuji-gateway.com/

    「ナイトウォーク〜クライの森と6つの星〜」(外部サイトに移動します。)https://www.cry-forest.com/