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持続可能な日々を今らしく。大注目のまち・那須「GOOD NEWS」

持続可能な日々を今らしく。大注目のまち・那須「GOOD NEWS」

栃木県那須郡

    2024.03.08 (Fri)

    目次

    日本全国のショップや催事で大行列を生み出している那須の銘菓「バターのいとこ」。アップサイクルでありながら品質の高さや高いデザイン性、そして何よりおいしいスイーツとして現在大ヒット中です。バターのいとこが本店を構える那須の「GOOD NEWS」は2022年にオープンした「森との共生」をテーマに掲げた複合施設。代表の宮本吾一さんに話をうかがいました。

    大人気商品「バターのいとこ」

    2018年の発売以来、大人気になっている「バターのいとこ」。酪農が盛んな栃木県・那須町で生まれたスイーツです。バターをつくる際、実は牛乳の4パーセントしか使用できず、残りの約90パーセントは「スキムミルク」となります。スキムミルクは安価で脱脂粉乳に加工するか廃棄するしかない、という状況は、常に酪農家を悩ませてきました。これを逆手にとり、スキムミルクを有効活用して生まれたのが「バターのいとこ」です。

    ふわっとバターが香る、ワッフルのようなゴーフレット生地。スキムミルクからつくられるとろっとしたミルクジャムをゴーフレット生地でサンドした、食感が楽しく、もはや那須の銘菓といえるほどの人気を誇っています。バターという主役に隠れて地味な存在となっていた脇役にスポットをあてたアップサイクルな商品であることも今の時代にマッチしたといえるでしょう。作り手も買い手もうれしい商品となり、現在でも売り切れが続出するほど大人気。大丸札幌店にも売り場を展開しており、日々多くのお客様で賑わっています。

    「バターのいとこ」の本拠地・栃木県那須町「GOOD NEWS」

    そんな「バターのいとこ」を製造している栃木県・那須町を訪ねました。「バターのいとこ」はコロナ禍で販路も拡大し、現在では品川駅や羽田空港など多くの場所で販売していますが、本拠地である本店と工場は栃木県那須町。「GOOD NEWS」という複合施設の一角にあります。

    陽が柔らかく差し込む「バターのいとこ」の店内では、バターのいとこが購入できるほか、本店限定の商品をイートインでも楽しむことができます。地元の人や観光客が混じり合い、老若男女問わない客層が、いかにこの場所が多くの人に愛されているかを表しています。

    • 左:いとこのアイス 右:ナインティーバナナスムージー

    店内には、商品の説明だけでなく、さりげなくサステナブルな取り組みがここかしこに見られます。

    「GOOD NEWS」は那須塩原駅から車で20分ほど北に位置する、約4万3000平方メートルもの広さの森の中に2022年にオープンした複合施設です。「森との共生」を大きなテーマとして掲げ、カフェや雑貨店が並ぶ「GOOD NEWS NEIGHBORS」、そして徒歩で5分ほど離れたエリアにある「バターのいとこ」など、ミルクを使ったスイーツや乳製品店が集まる「GOOD NEWS DAIRY」、食品製造場の「GOOD NEWS FACTORY」の3エリアで現在構成されています。

    施設内はまさに森の中にできた新しい“まち”のようです。自然の心地よさと、スタイリッシュな店舗が共存し、気持ちのいい空間をつくりあげています。

    仲間たちがみんなでコツコツ。日々のサステナブルアクション

    バターのいとこだけでなく、テナントインするすべての店舗がサステナブルアクションを実行し、「持続可能な“まち”づくり」に寄与しています。

    例えば、全店舗で出るごみや廃棄物は可能な限りコンポストによって処理され、土に還ります。

    “森を元気にする”ために、植樹のみならず、落ち葉や枝をかき混ぜてあげるなど小さいけれど大切なアクションも行っています。訪れた人々が、カフェや買い物を楽しむだけでなく、森との触れ合いをもっと身近に行ってもらえるよう、自然な形で散歩がしやすい場所をつくったり、ひと息つけるベンチなどを設置したりしています。

    まさに「森との共生」を目指した活動も積極的に行い、それが訪れた人の目に触れる形でつくられており、ショーケースとして機能しているといえるでしょう。

    GOOD NEWS が目指す「みんなが幸せ」

    「GOOD NEWS」の代表であり「バターのいとこ」の生みの親である宮本吾一さんに話をうかがいました。

    東京生まれの東京育ちである宮本さんは、那須町ともともと関係があったわけではないのだといいます。

    「東京という街がどうも合わなくて、卒業後、オーストラリアのメルボルンでしばらく暮らしたのですが、そこは都市の機能と自然のバランスがすごくよかったんです。ただ田舎がいいとか、自然が多い方がいいというよりも、都市機能と自然のバランスって共存可能なんだなっていうのを実感したんですよね。経済活動もあって、自然も近くて、人と人の距離感とか、そのバランスは僕にとってはすごく大事にしていることですね。今振り返れば、それが持続可能というキーワードにつながっていくような気もします。」

    東京ではなくどこか地方だったら隙間があり、時間も場所もあるため自由度があると考えた宮本さん。その場所を探している時にたまたま那須町に行きつきました。

    「リゾートバイトでたまたま那須に来たんですが、それまで来たこともなかったので正直思い入れもなかったですね(笑)。」
    しかし、その「思い入れのなさ」が現在の行動原理にも現れているのかもしれません。

    「『那須をなんとかしなきゃいけない』『やらなきゃいけない』という気持ちは全然ないんです。課題解決ももちろん必要ですが、『やりたいからやる』『やりたくないことは無理しない』。それがまさに今の時代の心地よさとして重要だなと思っています。」

    原点となった「那須朝市」

    素敵な作物をつくる農家さんやら酪農家さんが那須にはたくさんいます。
    那須での暮らしを続けるうちに宮本さんは「もっとこの人たちと他の人たちとの接点をつくりたい」と朝市をはじめます。

    「出店する農家さんたちと、朝市へ来る人たちの笑顔。会話。それは原点ともいえますね。それが本当に嬉しくて。みんながその場で朝食を一緒に食べるなど、そこでの光景が今でも僕が大事にしている『一緒に食卓を囲む』という原風景になっているとおもいます。」

    「結局7年続けたのですが、朝市はひとりでやっていたので、最終的にものすごく疲弊してしまったんですよね。規模が大きくなるほど色々な意見もあって。全員がハッピーというわけでもないという状況が徐々に出てきてしまったんです。フラストレーションが生まれるのはすごく嫌で、サイズ感の大事さを痛感しました。みんながハッピーであることを大事にしたいのに、まず僕がハッピーじゃないし、誰かに不安が生まれている。それってもう、このやり方に限界があるのかなと思うようになったんです。同時に朝市でたくさん見られたみんなの笑顔や、たくさんの人が一緒に朝食を食べる光景っていうのはどうしても守りたくて。なので、これはきちんと経済活動のなかでそれを生むということがネクストステージでした。」

    ネクストステージは、那須の隣町である黒磯で現在9年目を迎えた複合施設「chus(チャウス)」。毎日朝市ができるような農家さんの美味しい野菜が並ぶ「MARCHE(直売所)」、その食材を使った料理を楽しめる「TABLE(ダイニング)」、さらに宿泊機能も揃った店舗をつくったのです。

    「機能としては維持していますが、オープンな場の朝市が店舗になったことで、入口は狭くなった。でも、小さな世界で、自分たちの守りたいこととか大切にしたいことをやっていけばいいし、その思いを共有したメンバーからユニットが増えていけばいいと思ったんです。そうやって生まれたコミュニティみたいなものがすごく大事ですね。」

    その「仲間」も、特に那須の人に限ったことではないのだといいます。
    「朝市で見た笑顔の光景もそうなんですが、一緒にごはん食べられるかどうかって大事な気がします。一緒に食卓を囲めるか、同じものを見て、同じことを経験しているのか、というのが僕が考えるコミュニティのつくり方。お客様も、出店者も、みんなそのコミュニティの一員ですよね。その考え方は新しい『GOOD NEWS』で出店してもらったメンバーを見ても一貫していますね。」

    那須には人とのつながりやコミュニケーションが生まれるような場所はなかったのだそうです。

    「那須って少し特異なところがあって、いわゆる住宅も店舗も『密集地』みたいな場所がないので、人に会わないでいようと思えばいられる。もちろん煩わしくない、などのよさもあるのですが、コミュニティのプラットフォームみたいなものがなかったんですよ。自然発生的に“人が会う”という結束点が必要だなと思ったんです。それをいやらしくない形で実現するためには、マーケットってあるべきだなというのを僕自身もやりながら学んできました。人と人が結びついていくときの場所を提供すると、そこに情報を人が集約することになるので、お互いがハッピーになるということも大きなポイントかもしれませんね。」

    日々の営みが未来へとつながる

    宮本さんは、未来のGOOD NEWSをどのように考えているのでしょうか。

    「将来はこうなりたい、って実はないんですよ。持続可能って言葉の通り、持続していることが何よりですよね。『森との共生』って森が元気になる、それによって人も元気になる…ということ。それは劇的な変化というより“あり方”なので、10年後の話でもあり、明日の話でもある。アクションをし続ける日々の営みを止めない、ということがGOOD NEWSの未来への歩み方かなと思っています。」

    ここまでの宮本さんの歩みを振り返ると、徐々に「持続可能であること」へ近づいてきたことがわかります。

    「朝市をひとりでやっていくのは持続可能じゃなかったけど、価値観が重なり合う仲間が増えて施設を構えたことで持続可能なプラットフォームがつくれた。ただハコがあるだけではもちろんダメで、日々のアクションを止めない。それが未来へつながっていくのだと思っています。」

    GOOD NEWS NEIGHBORS
    栃木県那須郡那須町高久乙24-1

    GOOD NEWS DAIRY
    栃木県那須郡那須町高久乙2905-25
    営業時間 9:00〜17:00
    定休日 第2木曜日(営業時間・定休日は店舗により異なる場合あり)
    公式サイト(外部サイトに移動します。)https://gooooodnews.com/

    バターのいとこ
    公式サイト(外部サイトに移動します。)https://butternoitoko.com/

    バターのいとこ
    北海道札幌市中央区北5条西4-7
    大丸札幌店地下一階
    営業時間 10:00〜20:00
    ※営業時間は変更になる場合がございます。