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“地域”を表現するクラフトジン。「エシカル・スピリッツ」がチャレンジするローカルプロダクトとは?

“地域”を表現するクラフトジン。「エシカル・スピリッツ」がチャレンジするローカルプロダクトとは?

東京都台東区

    2024.03.08 (Fri)

    目次

      近年ブームの「クラフトジン」。東京・蔵前でエシカル生産及び消費に特化した世界初の再生型蒸留所『東京リバーサイド蒸溜所』をオープンしたことでも注目の「エシカル・スピリッツ」はそのブームを牽引する存在です。さまざまな地域や企業とコラボを多く行い、ユニークなローカルプロダクトも生んでいる彼らは、どのような想いでさまざまな地域と向き合っているのでしょうか。代表の小野力さんに話をうかがいました。

      東京・蔵前発クラフトジン「エシカル・スピリッツ」

      日本を代表する観光地・浅草のほど近くである、東京都台東区蔵前。多くの通行人が行き交う大通り沿いに、綺麗なグリーンブルーの「エシカル・スピリッツ」の文字が目立つ場所があります。そこはクラフトジンの蒸留所&ショップ「東京リバーサイド蒸溜所」です。

      店頭ではさまざまなジンの香りを楽しめるようなボトルが並んでおり、通行人が思わず足を止めて「何のお店ですか?」と声をかける姿も見られます。

      近年ブームとなっているクラフトジンですが、エシカル・スピリッツはただジンをつくるだけでなく、ユニークな素材を使用することでサステナブルなものづくりを実現し、今注目を集めています。現在代表を務める小野力さんから話をうかがいました。

      「エシカル・スピリッツは、前代表である山本と一緒に2020年に立ち上げたのですが、そもそもの発端は、山本が日本酒のセレクトショップを経営していたことから。さまざまな日本酒の酒蔵さんと会話する中で、廃棄されてしまう酒粕の有効活用について何かできないか、と模索していたんですね。酒粕から焼酎をつくる、ということ自体は行われてはいたのですが、今の時代にもっと合わせた商品を、ということで思いついたのがクラフトジンでした。」

      「クラフトジン」の表現の面白さ、奥深さについて

      「ジン」というプロダクトの中にさまざまな素材を利用することで、さまざまな表現ができる。その自由度に注目したのだそうです。

      「山本も僕もイギリスにいたことがあり、そのアルコールシーンに注目してみると、ウイスキーよりジンの方がよく飲まれているというのを目にしたんですよね。このマーケットは日本にも来るんじゃないかな、という点に加えて、未活用のものや廃棄されているものを酒粕以外にも活用できて、アップサイクルな生産ができるという観点。この両立ができればなかなか面白いじゃないか、と思いました。」

      クラフトジンの魅力は、他のお酒に比べると香りが強いことなのだと小野さんは語ります。

      「ジンは非常に香りが高いので、個性を香りで表現できるんですよね。例えば海岸沿いにあるジンメーカーでは海塩や海藻を活用していたり、国立公園に近い場所にあるジンメーカーではその国立公園で育ったハーブを使ったりしていて。そのメーカーのロケーションや個性、こだわりなどの“物語”を強く出せるというお酒の一つだなと思っています。

      今や多くの国で生産されており、それぞれの国や地域のクラフトジンを見てみると、とても個性豊かで面白い。日本酒や焼酎と比べても、素材の香りがわかりやすく出るので、通じゃなくても違いや個性が理解できるというのがクラフトジンの魅力だと思います。」

      香りや素材を誰でも強く感じることから、飲んだ方にはやはり素材に思いを馳せてほしいのだそうです。

      「飲むと『あ、◯◯の香りだな』とわかると思うので、その素材が普段廃棄されてしまうものであったり、活用されていないものであったりするという僕らのこだわりの部分に届いてほしいですね。おいしい、と感じていただくのがもちろん大前提なんですが、その先に『こんなものからこんな香りがするんだ』『普段捨ててしまうあれからこんな味がするんだ』などの驚きや気づきにつながることが目的なんです。」

      ジンの原材料には「アルコール源となるもの」「香りづけするもの」の2種類の要素があり、アルコール源は細かい定義はないそうです。香りづけに関しては「ジュニパーベリー」というスパイスを入れるという唯一の条件があるそうですが、それ以外には何を入れても基本的にはOK。自由度の高さゆえ、レシピが無限につくれるクラフトジンは、表現の幅が広く、面白いプロダクトといえます。

      地域の企業から舞い込むコラボの依頼

      エシカル・スピリッツには現在、さまざまな地域の企業からコラボ商品をつくりたい、というオファーが舞い込んでいます。

      例えば東京新宿・歌舞伎町の「Ne10」。

      「昨年、東急歌舞伎町タワーの開業を機に、東急不動産さんと地元の方々から『何か歌舞伎町のお土産になるものが欲しい』ということで声をかけられました。歌舞伎町といえばお酒だ!ということで、お土産にするのと同時に、歌舞伎町内の飲食店で多く使用されるようにしてもらいました。歌舞伎町に足を運ぶ一助になれればいいと思っていますね。」

      歌舞伎町のお土産、というのは少しイメージしづらいかもしれません。

      「歌舞伎町内に特産品っていうのはほぼないんですよね。じゃあ何を原材料に使うのかっていうのは大きな課題になってはきました。ただそれよりも、やっぱり地元の方たちの想いが大切なんですよ。彼らがどんな想いを持っているか、何を表現したいのかというのを軸にプロダクトを開発していきます。地元の方々とコミュニケーションを重ねていく中で、『多様性』を表現したい、ということだったり、歌舞伎町より広域ではありますが、新宿で獲れる『内藤とうがらし』を使用するということだったりを決めていきました。」

      原材料を決めることももちろん味を決める上で大切ですが、何よりエシカル・スピリッツとしては、歌舞伎町ならではのスタイルや暮らしなどに根付くキーワードを発見するのを大切にしています。

      「お酒がおいしい、ということはもちろん大前提なんです。でも、最終的にそれが提供されたところで起こる会話であったり、コミュニケーションであったり、提供してくださる方にどうストーリーを伝えてもらえるかだったり、がすごく大事だと思っているんです。つくりたいと思ってくださった方たちの想いを、クラフトジンという一つの製品にどうまとめるか。そこが僕らが面白いと思っていて、やりがいがあるところでもありますよね。」

      エシカル・スピリッツの理念の一つが「Starring the hidden gem(隠れた才能をステージへ)」。原材料に廃棄されてしまう酒粕を使う、ということに代表される大切な軸です。

      「『hidden gem』というのは、原材料だけでなく、まだ知られていない、気づいていない、可視化できていないストーリーもその一つととらえています。歌舞伎町にとって“多様性“というものがもたらす自由やそこから生まれるカオス感。それこそがまさに歌舞伎町という街のアイデンティティという議論から、コンセプトを決めていきました。」

      コンセプトは、主にデザイン面に反映されるようです。

      「どういう商品をつくるか、というのは大きく分けて味と見た目です。見た目というのはラベルデザイン、商品名など。なので原材料を決めてレシピを開発するというだけじゃないのが僕らがやっている意義かもしれませんね。」

      神戸観光局から依頼があった「365」にも、同様に神戸市の方々の想いを抽出して表現されています。

      「神戸らしいジンってなんだろう、ということを皆さんと考えさせていただきました。神戸は日本有数のバーの街。そこを最大限表現するために、酒粕は白鶴さんにいただいたり、有馬山椒というローカルフードを使ったり、レシピの最終監修は神戸のバーテンダーの方々にお願いしたりしています。『365』(サンロクゴ)は、港からの海風と六甲山の山風が、歴史ある街並みに寄り添う、神戸の日々をイメージし命名。三宮(3)、六甲山(6)、そして日本一の酒どころである灘五郷(5)から着想したんです。ラベルデザインには、神戸・六甲山に数多く自生し、また神戸市の市民の花でもある「あじさい」を採用しています。」

      神戸についての要素がたくさん込められたプロダクトであるにも関わらず、ベタなお土産品のようにならずにスタイリッシュな佇まいがあるのは、エシカル・スピリッツのこだわりといえそうです。

      「そうですね、一般的なストーリーやベタなデザインではなく、東京拠点の僕らだからこその視点を地域や地元企業の皆さんに提供する、というのがミッションかなと思っています。」

      大丸神戸店の店頭をはじめ、さまざまな店舗で販売中。また、神戸各地のバーでも楽しめる、まさに神戸の365日に寄りそうローカルプロダクトとなっています。

      東京ローカルを背負って世界へ

      現在は、東京・蔵前にエシカル生産及び消費に特化した世界初の再生型蒸留所『東京リバーサイド蒸溜所』と蒸溜所併設のストア、その2Fにはバー&ダイニングとしてクラフトジンを楽しめる飲食店『Stage』をオープンしています。

      「東京都内という場所にこだわっています。というのも、これからさまざまな酒蔵さんの酒粕を取り扱っていきたいと思っているので、それらのHUB的な存在であるためにはやはり東京に蒸留所を持つことが必要だなと思っていたんです。」

      蔵前はもはや、「かつてものづくりが盛んだった街」という観点のみならず、「先進的な取り組みをするインディペンデントなチーム」が集積するエリアともなってきている。

      「蔵前は、街の方々や近隣のショップ・企業さん含めてものづくりに対する視線があたたかいですね。新しい取り組みなどに対してもどんどん受け入れてくださる方、コラボしようと声をかけてくださる方も多い。また、浅草が徒歩圏なので、宿泊している観光客の方が通ることも多いんですよ。」

      2Fのバー&ダイニングでは、クラフトジンも豊富に取り揃えているため、訪日観光客がここを目当てにやってくることも多いのだそうです。

      「味はもちろん評価いただいていますが、エシカルが原材料の根底にあるものづくり、という観点には驚かれますね。海外では、生産工程においてサステナブルであったり、再生エネルギーを取り入れていたりというメーカーはありますが、そもそもの原材料に廃棄してしまうものを定めるということは珍しいようです。」

      元々は海外のクラフトジンシーンとの出会いから生まれたエシカル・スピリッツですが、その個性を日本国内で育てた今、積極的に国外の展示会への出展などプレゼンテーションを行なっています。

      「国内では、アップサイクルの取り組みや、高品質であることが一つの売りであるんですけど、海外でいうと『メイドインジャパン』のプロダクトってすごく評価が高いんですよね。ジャパニーズウイスキーの格が高いことで、日本のスピリッツであることが一目置かれる。なので、やはりメイドインジャパンであることと、そしてフロムトーキョーであること、というのを海外ではさらにアピールしています。」

      四季があり、東西南北さまざまな文化や暮らしをもつ日本。さらに全国各地と連携できる、情報や技術・センスの集積地である東京に拠点を置いている。世界基準のサステナブルを国内で発信しながら、東京ローカルを背負って世界にも羽ばたく、エシカル・スピリッツの今後の活動に注目です。

      大丸松坂屋オンラインストア
      https://www.daimaru-matsuzakaya.jp/Search.html?keyword=エシカル・スピリッツ

      エシカル・スピリッツ株式会社

      公式WEB(外部サイトに移動します。)https://ethicalspirits.jp/

      公式Instagram(外部サイトに移動します。)https://www.instagram.com/ethicalspirits_jp/