京都府
2024.06.05 (Wed)
目次
古きよきものを今に伝えながら、新たな試みも絶えず生まれ続けている京都。そんな京都の知られざる魅力を発信するため、大丸京都店はコミュニティ・バンク京信(京都信用金庫)、株式会社パルコとタッグを組み、クラウドファンディングと展示会を連動させた「みっけ!kyoto」を実施しています。オンラインとオフラインを組み合わせた取り組みが地域にもたらす可能性とは?プロジェクトに携わった3社のメンバー6人に、プロジェクト誕生のいきさつや「みっけ!kyoto」にかける想いを聞きました。
【インタビュー参加者/写真左から】
門口 弘樹さん/コミュニティ・バンク京信
石津 亮さん/コミュニティ・バンク京信(QUESTION担当)
谷 京子さん/大丸京都店
堀岡 幸喜さん/株式会社パルコ
森下 容子さん/コミュニティ・バンク京信
周 澍杰さん/コミュニティ・バンク京信
※「コミュニティ・バンク京信」は京都信用金庫のブランドネームです。
「みっけ!kyoto」は、クラウドファンディングを通じて、京都の魅力向上に貢献する事業者の資金調達やファンづくりを応援するプロジェクトです。
京都にまつわるさまざまなプロジェクトを「みっけ!kyoto」のクラウドファンディングサイトに掲載。いわゆる「購入型」のクラウドファンディングで、返礼品を購入してもらう形で資金を募ります。
「当プロジェクトは、京都の魅力に貢献するという熱い想いを持った方々を応援することを目的にスタートしました。」と立ち上げメンバーのひとりである大丸京都店 営業推進部の谷京子は語ります。
WEB上だけでなく、リアルな場でもプロジェクトを支援する仕掛けが。募集期間中は、大丸京都店と共創施設「QUESTION」の2か所で展示会が開催されます。
「展示会は商品を売るのではなく、プロジェクトを紹介するパネルや返礼品の展示によって認知度を高めるのが目的です。リアルなプロモーションの場を設けることで、京都で頑張っておられる事業者様の魅力的な試みをたくさんの人に知ってもらえたら。」と谷。
2021年秋に第1弾がスタートし、11のプロジェクトがクラウドファンディングに挑戦。その後は回を重ねるごとにブラッシュアップを繰り返し、2024年5月には第4弾が実施されました。
「みっけ!kyoto」は、大丸京都店とコミュニティ・バンク京信、株式会社大丸松坂屋百貨店と同グループである株式会社パルコ(以下:パルコ)の3社がタッグを組んで進められています。3社のコラボレーションが実現したきっかけは、京都愛あふれる2つの取り組みがきっかけだったといいます。
「大丸が京都・伏見で創業してから300年という節目を迎えた2018年、大丸京都店は『古都ごとく京都プロジェクト(KKP)』をスタートしました。『先義後利』を掲げる大丸だからこそできる、モノを売るだけではない京都の魅力づくりに取り組んでいたんです。イベント企画や展示、大丸と京都との関係が深いモノの復元事業など、活動内容は多岐にわたります。活動を進める中で、同グループの株式会社パルコでクラウドファンディングに携わるチームがあると知り、いずれ一緒に何かできればと考えていました。」と谷。
クラウドファンディング「BOOSTER」の担当者であるパルコの堀岡幸喜さんは、当時を振り返りこう語ります。
「パルコは2014年から購入型クラウドファンディング『BOOSTER』をスタートし、2018年には国内最大級のクラウドファンディングである『CAMPFIRE』と共同運営する形式をとって、まだ世に出ていないプロジェクトを普及させるお手伝いをしてきました。もとはファッションをメインに展開していたのですが、京都でさまざまなジャンルのプロジェクトに関われるのは面白そうだと思いましたね。」
一方、「新しい時代のコミュニティ・バンク」を掲げるコミュニティ・バンク京信は、金融機能(京都信用金庫河原町支店)とコワーキングスペース、イベントスペースなどを備えた「QUESTION」を2020年11月にオープン。そのユニークな試みが話題を呼びました。
「QUESTIONでは、地域のさまざまな立場の人から寄せられる“問い”を解決することをテーマにしたコミュニティづくりに取り組んでいました。そんなときに、谷さんから大丸京都店の『古都ごとく京都プロジェクト』のことを伺ったんです。」と当時QUESTION館長であった森下容子さん。京都の魅力づくりに貢献したいという想いは同じだったといいます。
「大丸京都店でのプロモーションを組み合わせたクラウドファンディングの構想はあったものの、小売店である大丸やパルコにはプロジェクトにチャレンジする事業者さんとのつながりはありませんでした。京信さんは地域に強力なネットワークを持っていらっしゃるので、ご協力を仰ぐにはピッタリではないかと。」(大丸京都店・谷)
「おっしゃるとおり、京信は京都で活躍する多くの事業者さんとのつながりがあります。ただ、金融機関として資金面での支援をすることはできても、本業の売上アップや販路拡大につながるような直接的なサービスを提供できていないのが課題でした。京都で長く愛され、多くの人で賑わう大丸京都店と共にプロモーション活動ができるのは、私たちのお客様にとっても大きなメリットになると感じました。」(コミュニティ・バンク京信・森下さん)
クラウドファンディング構想を本格的に始動させるべく、大丸京都店とコミュニティ・バンク京信は2021年に「京都の魅力向上に寄与する事業者支援に向けた業務連携契約」を締結。京都の一等地で発信ができる大丸京都店、京都の事業者との強力なネットワークを持つコミュニティ・バンク京信、クラウドファンディングのノウハウが豊富なパルコという3社による新たな挑戦が始まりました。
「みっけ!kyoto」第一弾のスタートに向け、まずはコミュニティ・バンク京信の職員向けに説明会が行われ、職員から取引先である事業者へ打診する形でプロジェクトの参加者が募られました。その結果、当初の予想以上に多くのプロジェクトが寄せられたといいます。
「魅力的なプロジェクトばかりでしたが、掲載期間や展示スペースは限られていますので、心苦しいとは思いながらも掲載プロジェクトの選考を行いました。」(コミュニティ・バンク京信・森下さん)
「選考基準は『京都の魅力アップに貢献する』というテーマに沿っていることと、プロジェクトを実現しようという熱意や本気度でした。皆さんがどんなことをやりたいかを丁寧にヒアリングし、3社のメンバーで話し合いながら選考を進めました。」(大丸京都店・谷)
当時営業を担当していたコミュニティ・バンク京信の門口さんはこう振り返ります。「京都には魅力的なモノづくりやユニークな試みを行っている事業者さんがたくさんいらっしゃいます。ただ、いいモノを扱っていても発信することに悩みをお持ちであることが少なくありません。選考から漏れたとしても、『みっけ!kyoto』に応募したことで発信について考えるきっかけができ、認知度アップにつながったと喜んでもらえることが多かったですね。」
選考の結果、食品やアクセサリーの新商品開発や、サウナ建設など、さまざまなジャンルのプロジェクトがそろい、WEB掲載に向けた準備が加速していきました。
「プロジェクトを紹介するためのサイトの制作は、あくまで事業者主導で作業を進行していただく必要があります。我々がもちろん掲載までのお手伝いはさせていただくものの、細かい文言やメッセージなどは考えてもらわなければいけません。プロジェクトにかける熱意や想いを自分の言葉で伝えること。それが多くの人に共感してもらえるポイントだと考えています。」(パルコ・堀岡さん)
クラウドファンディングに挑戦した経験のある事業者が多くない中、自分の言葉で発信することは簡単ではなかったのだそう。そんなときはサポートを惜しまなかったと堀岡さんはいいます。
「クラウドファンディングには独特の規約や審査がありますし、返礼品の価格設定やtoC向けの発信方法など、考えることが山のようにあります。プロジェクトの内容や事業者さんの事情もさまざま。一律のマニュアルやスケジュールが作成できない状況で、いかにスムーズに掲載を進めるかは、私たちの腕の見せ所でした。」
「みっけ!kyoto」第一弾のWEBサイトが完成し、大丸京都店の特設展示場とQUESTIONではそれぞれ1週間にわたって展示会が行われました。
「近所にこんなに素敵なお店があったなんて!」と実店舗に足を運ぶきっかけになったり、「プロジェクトについてもっと詳しく知りたい」と熱心に問合せ先を確認するお客様がいたりと、反応は上々だったのだそう。
「百貨店ではふだん目にしないようなスモールビジネスや、学生さんによるプロジェクトなどが展示されたことが、大丸のお客様の目に新鮮に映ったようです。最初は商品を販売していないことに戸惑う方もいらっしゃいましたが、クラウドファンディングの紹介だと知ると興味を持ってくださいましたね。」(大丸京都店・谷)
プロジェクト参加者からの評価も高く、2度目の挑戦をする事業者もいるのだとか。
「新たな商品や事業構想を持って、リピート参加する事業者さんもいらっしゃいます。中には目標金額に達しなかったプロジェクトもあるのですが、『自分の構想が世間にどれだけ受け入れてもらえるのかを測るいい機会になった』と嬉しい言葉をいただきました。そのような活用の仕方があるのかと、私たちも勉強になります。」(コミュニティ・バンク京信・門口さん)
「みっけ!kyoto」をきっかけに、新たな交流も生まれています。
「プロジェクトの参加者の中には、期間中に掲載された別のプロジェクトに興味を持ち、京信の営業担当者を通じてアプローチしたという方もいらっしゃいました。事業者同士が意気投合し、新たなコラボ商品やプロジェクト誕生に結びついたケースもあると聞いています。」(コミュニティ・バンク京信・森下さん)
さらには、コミュニティ・バンク京信の職員にとっても嬉しい変化が起こりました。
「私たちは日頃のお付き合いの中で事業者の皆さんの魅力的な取り組みを知る機会があります。ですが、自分たちが得た知識や情報を発信する手段がありませんでした。『みっけ!kyoto』によって資金面だけではない本業支援ができるようになったことや、他の支店でお付き合いしている事業者さんの魅力を知れるようになったことは、職員にとっても大きなプラス。お客様の役に立てることが嬉しいです。」(コミュニティ・バンク京信・周さん)
「QUESTIONでの展示会を通じて、新たな問いを持ち込んでいただくきっかけになったり、京信が主催する別のイベントをご案内したりといったこともありました。『みっけ!kyoto』から、さらに事業を発展させるお手伝いの輪を広げていきたいですね。」(コミュニティ・バンク京信 /QUESTION担当・石津さん)
「みっけ!kyoto」は回を重ねるごとにブラッシュアップを繰り返し、4回目からは初の試みとしてQUESTIONでの展示会に合わせたマルシェ式の対面販売が開催されました。
「これまでの展示は無人で行っていましたが、マルシェではプロジェクト参加者から希望する方に出店し 、直接販売していただきます。訪れる人たちの反応を直接確かめられることはもちろん、これまで以上に事業者同士の情報交換や協業に結びつく交流の場にしていきたいですね。」(コミュニティ・バンク京信・森下さん)
「私たちも、事業者の皆さんと直接お会いできる機会が楽しみです。『みっけ!kyoto』を軸に、京都でより多くのご縁が生まれるお手伝いができればこんなに嬉しいことはありません。」(大丸京都店・谷)
百貨店や金融機関の強みを生かしつつ、立場を越えた熱意によって生まれたプロジェクト「みっけ!kyoto」。小さな試みが枝葉を伸ばしつつあり、目が離せません。