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体感する、北海道。ニセコの自然と共に歩むローカルコスメ「ICOR」

体感する、北海道。ニセコの自然と共に歩むローカルコスメ「ICOR」

北海道虻田郡

    2024.08.20 (Tue)

    目次

      2020年に生まれたスキンケアブランド「ICOR」は、北海道・ニセコの羊蹄山の湧水をベースに誕生しました。ジェンダーニュートラルなブランド誕生の背景には、ニセコのローカル/ツーリスト、日本/海外などのボーダーなく交わる町の価値観があります。そんな世界観を体現している本店・カフェを訪ね、ディレクターの宇津木ユミコさんにお話をうかがいました。

      世界中のツーリストに愛される北海道・ニセコの魅力

      新千歳空港から車で約2時間。羊蹄山やニセコアンヌプリなど、周囲を豊かな自然に囲まれたニセコは、国内随一のスキーリゾートとしても知られ、独特な地形が生み出す上質なパウダースノーを求めて、冬になると国内外からたくさんの観光客が訪れます。

      道内のほかのエリアに比べても、圧倒的に外国人観光客が多いニセコは、海外富裕層をターゲットにしたラグジュアリーホテルや高級コンドミニアムが数多く存在しています。外国人観光客向けのレストランやショップなども多く立ち並び、公用語が英語かと思うほど看板など町のあちらこちらで英語の表記を目にします。ローカル/ツーリスト、日本/海外など、ボーダレスなコミュニティーが存在する町なのです。

      羊蹄山の美しい水に魅せられたスキンケアブランド「ICOR」

      米ぬか*1やガゴメ昆布*2を用いたオイルクレンジングや、鮭のコラーゲン*3を用いたオイルインミストトナーなど自然由来のコスメが揃う

      2000年、共同代表を務める竹下マリさんと宇津木ユミコさんの二人が立ち上げた「ICOR」は、アイヌ語で「宝物」を意味する「イコㇿ」が由来となっています。

      「羊蹄山から流れてくる水も、自然も、私たち自身も全部地球が生んだ宝物で、それを大切にして輝かせていこうという意味でつけました。」と、共同代表のおひとり、宇津木ユミコさんが話してくれました。

      ブランドが最も大切にしているのが、蝦夷富士の愛称で親しまれる羊蹄山の雪どけ湧き水。「二人でブランドを立ち上げることを決めたときに、どこを拠点にするのか、全国各地いろいろな場所をリサーチしました。化粧品の要になるのはやはり水。最終的に北海道を選んだのは、いろいろな場所で水を調査した結果、一番肌に合うのではないかと、羊蹄山の湧き水に魅力を感じたからなんです。」

      宇津木さんと共に代表を務める竹下マリさんは「ICOR」を立ち上げる以前にも上海でコスメブランドを立ち上げていました。海外のマーケットにおいて、日本のコスメブランドといえば「自然をすごく大事にしていて、サステナブルにも気を遣っているブランド」が多く、それが多くの人に受け入れられている印象だった点が、ブランドづくりのヒントになったのだといいます。

      「そういった背景から『ICOR』では、羊蹄山の水をベースに、その美しい水に育まれた自然の恵みをふんだんに取り入れたプロダクトづくりをすることにしました。ニセコは北海道の別の地域と比べても寒暖差が激しい。その結果、芽吹きの時期には植物が信じられないくらい強く育ってくれるんです。その生命力の強い植物をプロダクトに使えるというのもニセコという土地ならではですね。」

      「ICOR」のプロダクトには、羊蹄山の湧き水をはじめ、地元酒造の米ぬかやシラカバの樹液、サケのコラーゲン*3など、さまざまな自然素材を使用されています。さらに自然由来成分を90%以上配合、石油系界面活性剤や合成防腐剤、合成香料などは避け、ナチュラルなプロダクトづくりに取り組んでいます。自然にも身体にも優しいプロダクトづくりは、まさに「ICOR」がブランド名に込めた願いそのものといえるでしょう。

      ミックスカルチャーが根付くニセコと、ジェンダーニュートラルなプロダクトづくり

      また、ジェンダーや年齢、肌質を問わないジェンダーニュートラルなプロダクトづくりも「ICOR」が大切にしていることのひとつです。

      「ニセコはさまざまな年齢・性別の旅行客の方が訪れる土地なので、商品づくりのうえで、できるだけどなたでも使っていただけるようにというのは心掛けました。弊社のプロダクトは、オイリー肌とか敏感肌とか、肌質別には分かれていないのが特徴。使用量を調整していただくことで、どんな年代のどんな肌質の方でも使えるようになっているんです。」

      多様なカルチャーを受け容れるニセコの町のように、みんなにとってよいプロダクトづくりに取り組む「ICOR」。家族やカップル、友人同士で一緒に使ってもらうことによって、容器のロスも減らすことができるのも「ICOR」のプロダクトの魅力だと、宇津木さんは話してくれました。

      ICORらしさを体現する“場”としての「ICOR NISEKO」

      自然と切っても切り離せない「ICOR」。その本社兼カフェとして作られた「ICOR NISEKO」はそのブランドイメージをダイレクトに表現しています。

      「羊蹄山の水を肌で感じてもらいたい」との思いを込めて造られた建物は、まるで自然を眺めるためのギャラリーのような装い。

      S字の建物は、回廊のようになっており、カフェの客席として使用されています

      交通量の多い国道沿いにあるにも関わらず、建築家の長谷川豪さんの設計により、視覚的にも聴覚的にも車の存在を感じさせなくなっているのは驚きです。

      元々の地形を生かし、S字型の細長い建物にデザインされた建物の隣には、羊蹄山の雪解け水の小川が流れています。テラスへ出ると、川のせせらぎを感じることができます。

      • テラス側の客席。夏は虫除けのためカーテンが設置されています

      建物のエントランスには、庭園と菜園がミックスしたガーデンエリアがあり、季節の花々やハーブ、野菜などが栽培されています。

      季節折々の花や植物を眺めながら散歩もでき、訪れる人を癒してくれます。

      「元々この土地自体がかなりの粘土質で、土を改良していかないと植物が育たない。そこでまずは、そば殻やもみ殻など地元の素材を使い、自分たちの手で土を育てるところから始めました。」

      ランドスケープデザインは、自然と人が共存する持続可能な社会をつくるためのデザイン手法「パーマカルチャー」を取り入れ、宇津木さんの夫の英俊さんが設計。ガーデンで採れるハーブや野菜は、カフェのメニューにも使用されています。

      見た目が美しいだけでなく、ビューティー&ヘルシーなカフェメニューを目当てに訪れる人は多く、週末は観光客のみならず周辺住民の憩いの場としても人気を集めています。

      ニセコ野菜のサンドイッチ(手前)と、オーロラジュース(左)、琥珀ラテ(右)

      四季折々に美しいニセコの自然を五感で楽しめるのも「ICOR NISEKO」の魅力です。

      ローカルコスメだからこそできる、アップサイクルの可能性

      ニセコ発のローカルコスメとして、国内だけでなく、世界へもその名前が広まりつつある「ICOR」ですが、宇津木さん自身は“ローカルコスメであること”自体を意識しているわけではなかったそうです。

      「“輸送距離をできるだけ短く”とか、“できるだけ北海道の原料で”とか、サステナブルな視点でのものづくりを意識していったら、結果的にローカルコスメになっていったという認識の方が正しいかもしれません。」

      土地に根付いているからこそ、サステナブルな取り組みができると、ローカルコスメの可能性について語ります。

      「いま、『ICOR』ではアップサイクルした原料の利用にとても力を入れているところなんです。たとえば北海道近海で獲れる鮭。身の部分は加工品になるんですが、骨やヒレは残骸として残ってしまうんです。『ICOR』では、そこから採れるコラーゲンを主力商品であるオイルインミストの原料として使っています。」

      食の宝庫である北海道だからこそ、まだまだアップサイクルの余地があると話す宇津木さん。使われていない土地のアップサイクルも例外ではありません。

      「ニセコには管理が間に合っていない手つかずの土地がたくさんあるんです。ゆくゆくは、そういう土地で『ICOR』のプロダクトの原料となる植物を育てて、管理させてもらうことで、地域を巻き込んでものづくりを進めていければ。」

      地域をあげて、アップサイクルの取り組みをしていくことがこれからの「ICOR」の使命だそう。“自然の恵を取り入れる”だけでなく、その土地に真摯に向き合ってさまざまなエッセンスを取り入れていくことが、ローカルなプロダクトの素晴らしさをブランドに反映させていく秘訣なのでしょう。ますます発展する、「ICOR」の世界に注目です。

      *1 コメヌカ油 *2 クジェルマニエラギラタエキス *3 サクシノイルアテロコラーゲン

      大丸・松坂屋コスメサイト「DEPACO」(外部サイトに移動します。)https://depaco.daimaru-matsuzakaya.jp/shop/c/cicor

      ICOR NISECO
      住所:北海道虻田郡ニセコ町羊蹄99-3
      営業時間:10:00〜17:00
      定休日:水曜日

      ICOR公式Instagram @icorbeauty
      ICOR NISEKO公式Instagram @icorniseko
      ICOR公式オンラインサイト(外部サイトに移動します。)
      https://icor.jp/