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【生産者直伝レシピも】鹿児島県民の食卓に欠かせない「3年A組の」の「豚味噌仕込」

【生産者直伝レシピも】鹿児島県民の食卓に欠かせない「3年A組の」の「豚味噌仕込」

鹿児島県阿久根市

    2024.12.02 (Mon)

    目次

      鹿児島・阿久根市にある鶴翔高等学校の生徒が、授業の一環で手がける食品ブランド「3年A組の」。その人気商品である「豚味噌仕込」は、食卓に欠かせない味として地元の人たちに親しまれています。その製造現場を見せていただき、先代から30年以上続くこだわりのレシピの秘密や人気の理由を、食品技術科の教諭・山口美枝さんと食品技術科の3年生・増田羚ナさんにうかがいました。

      ブランド「3年A組の」についてはこちら

      高校生発ブランド「3年A組の」シリーズを象徴する「豚味噌仕込」

      「豚味噌仕込」200g 250円 ※鶴翔高等学校での販売価格

      鹿児島の郷土料理として愛されている豚味噌。奄美大島が発祥であり、地元のメーカーだけでなく伊佐農林高等学校の豚味噌「更生之素」をはじめ、県内の学校でも独自の味わいを追求し商品化されています。

      中でも阿久根市を代表する豚味噌が、鶴翔高等学校の前身である阿久根農業高等学校時代に生まれた食品ブランド「3年A組の」の「豚味噌仕込」です。1991年に商品が販売されて以来、地元の定番の味として定着しています。

      当時、「豚味噌仕込」の企画や製造に携わっていた生徒たちは、今では50歳前後になり、それぞれの道で活躍しています。約30年の時の流れの中で、「豚味噌仕込」は彼らの子供や親戚に伝播し、やがて阿久根市の家庭に1缶常備するほどメジャーな商品になっていったといいます。実際に、同校の3年生である増田羚ナさんに話を聞くと、「豚味噌仕込」は幼少期から家庭で食べることが多かったとのこと。

      「私が生まれる前に誕生したブランドですが、親戚のおじさんが阿久根農業高等学校の卒業生だったりするので、自分が高校に入学する前から『豚味噌仕込』を知っていました。家に遊びに行くと、必ずこの小さな赤い缶が食卓に出ていて、小さい頃からご飯と一緒に食べていた記憶があります。」(食品技術科の3年生・増田羚ナさん、以下増田さん)

      地元の人に長く愛される味だからこそ、レシピを変えずに作り続ける

      黄金色の豚味噌

      「豚味噌仕込」が地元の人たちに広まっていった理由には、もちろん味の美味しさがあります。生姜の効いた甘い味噌の味わいは、さまざまな料理と相性が良く、幼い子供からお年寄りまでどんな人の口にも合います。一方で、独自の味にたどり着くには、大変な苦労があったようです。

      「豚味噌は、すでに近隣の各高校で商品化されていたので、郷土料理の豚味噌の味を基本としながら、何か個性を出す必要がありました。試行錯誤の末、生姜を強く効かせることで他と差別化をはかり、現在のレシピが完成したと聞いています。

      このレシピは、阿久根農業高等学校、そして現在は鶴翔高等学校の生徒たちに約30年以上もの間受け継がれてきました。地元の人々に長く親しまれる思い出の味だからこそ、当時のレシピをそのまま再現することにこだわっています。」(食品技術科教諭・山口美枝さん、以下山口さん)

      1年生から3年生まで、全員で取り組む豚味噌作り

      材料を炒める工程。30分近く混ぜ続ける必要があり、大変な重労働です

      「豚味噌仕込」は、食品技術科の生徒たちの手作業によって作られます。大きな工場と違い機械に頼らず、一つひとつの工程を丁寧に確認しながら行います。

      そのため、1回の授業で製造できる量は約2,000個(100g)程度。1年生は使用する野菜などの原材料を加工・計量、2〜3年生が製造など、学年ごとに役割が分担されています。

      「豚味噌仕込」に使用する材料。鹿児島産・白豚、三温糖、生姜、ニンジン、タマネギ、麦味噌、みりん、ガーリックパウダー、すりごま

      豚味噌作りは、豚肉を炒めるところからスタートします。使用するのは鹿児島産の白豚。豚味噌のコクを引き出すのに欠かせない三温糖は、3回に分けて加えられます。材料が増えるにつれ木ベラにかかる重量は増し、調理を担当する生徒は熱さと重さとの戦いです。

      • 先生が指導をしながら調理が進みます

      • 奄美大島ではザラメを使っていたこともあり、使用する砂糖はコクが出る「三温糖」です

      • 味噌は校内作られた麦味噌

      鹿児島産の白豚以外にも、玉ねぎやにんじんなどをはじめ、九州で採れた特産物を使用しています。「豚味噌仕込」の主原料となる味噌は、九州で昔から好まれてきた麦味噌を使っているそうです。

      「麦味噌は、食品技術科の生徒たちが作ったもので、国産大豆を加工したこの味噌自体も美味しくそのままで販売したいのですが、豚味噌の製造分を作るのがやっと。食品加工工場ではないので、無理をせずできるものを作っています」(山口さん)

      • 炒めと煮詰めを終えて、完成した豚味噌

      • 豚味噌の100g缶は鹿児島県の各学校が豚味噌用として使用するために特注したもの

      • 充填・計量を行う様子。誤差がないよう正確に計量されます

      • 蓋をする工程。機械は代々受け継がれた年代もの

      • 殺菌を行う様子。先生が主となり、時間と温度を測り、正確に進めます

      • 全ての工程は、先生がチェック。事故を未然に防ぐだけでなく、起きてしまった際の原因究明に大事な記録です

      煮詰め終わった豚味噌は、消毒した缶に充填。計量した後に封を閉じ、110℃の高温の蒸気で殺菌を施します。きれいに噴き上げて、ラベルを貼ったら完成です。

      生産者直伝!ご飯がもっと進む「豚味噌仕込」を活用したレシピ

      「3年A組の」の「豚味噌仕込」の食べ方は、ご飯や冷奴などと一緒に味わうのが一般的。しかし、鹿児島産の白豚や野菜の旨み、そして生姜を効かせた味のしっかりある味噌なので、調味料として料理のアレンジに使うことも多いといいます。今回は、「豚味噌仕込」の製造に携わる増田さんが家族と一緒によく食べているというおすすめレシピを2つ教えていただきました。

      甘みのある味わいがクセになる!「豚味噌仕込」餃子

      たねを包むなど、家族みんなで一緒に調理が楽しめる餃子は、味付けに「豚味噌仕込」を使用するだけでいつもとひと味違う味わいに。

      「我が家では何でも手作りするので、餃子を作る時に隠し味としてたねに『豚味噌仕込』を入れています。豚味噌には、生姜やガーリックパウダー、みりんも入っているので、味付けとして万能なんです。私は、焼き上がった後、醤油などを付けずにそのまま食べています。程よく甘味が効いていて美味しいですよ。」(増田さん)

      コクと旨みたっぷりの「豚味噌仕込」野菜炒め

      忙しい日の食事作りは大変!という時に、豚味噌を調味料として使えば、絶品料理が完成。「豚味噌仕込」にしっかり味が付いているため、野菜にコクや旨みがプラスされます。

      「ナスやピーマンに豚肉の旨みと味噌が染み込み食べごたえも抜群です。味噌はさまざまな食材に合うので、冷蔵庫に残った野菜を消費するのにもおすすめ。『豚味噌仕込」で味付けをすれば、手抜きだけど満足感のあるおかずができます(笑)」(山口さん)

      他にも、地元の家庭では、お肉の漬け込みやカレー、麻婆豆腐の隠し味など、さまざまな料理に使われているとのこと。地域に根ざした味は、これからも人々の食卓を豊かに彩っていくことでしょう。

      鹿児島県立鶴翔高等学校
      (外部サイトに移動します。)http://www.edu.pref.kagoshima.jp/sh/kakusho/