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八百万の神々が集う“ご縁の国”出雲。「ANDIZUMO」が水性ネイルに込めた想い

八百万の神々が集う“ご縁の国”出雲。「ANDIZUMO」が水性ネイルに込めた想い

島根県出雲市

    2024.12.12 (Thu)

    目次

      「ANDIZUMO」は、縁結びの神社として有名な出雲大社のある島根県出雲市で誕生した水性ネイルを手掛けるクラフトブランドです。
      動物由来成分や化学成分を使わず、環境や人・動物に優しい水性ネイルは、SDGsの観点からも近年注目を集めています。爪への負担が少ないことも魅力のひとつです。

      出雲で生まれた水性ネイル、とはどんなものなのでしょうか。ANDIZUMOのアトリエのある出雲市の「漁業の町」鷺浦(さぎうら)を訪ね、代表の木村一恵さんにお話をうかがいました。

      ご縁に導かれた出雲との出会い

      木村さんは大阪府在住。忙しい日々の中で、突然大切なお母様との別れを経験します。

      あまりにも早い別れに、お母様に対して恩返しが出来なかったことに後悔をした木村さん。

      「父には恩返しがしたいと思い、父と一緒に仕事をすることに決めました。程なくして出雲大社のお守りを渡されました。私たちの会社は出雲の工場とともにOEM製品をつくる事業を他社から引き継ぎました。出雲という町にも縁がなかったですし、工場での製品づくり自体は当時の私には知識のない仕事でした。」

      怒涛の日々に見えた一筋の光

      最初は出雲での仕事に慣れることで精一杯で、自分がこの仕事を続ける意味は何なのか、なぜ出雲に来ることになったのか自分で意味を見出すことができず、ただがむしゃらに過ごす日々は自分らしさとは程遠いものだったそう。

      「会社と自分の未来を考えていたとき『せっかく出雲で仕事をしているのだから、発注された仕事をただこなすだけでなく、自分も社員も誇れるもの、出雲が主役のものづくりがしたい。』という思いが溢れたのです。」

      自分にできる事は何だろうと模索する日々。

      「ネイルアートをするのが大好きだったので、指先にカラーがないと、私自身は気分が下がってしまいます。ネイルアートには人の気持ちを上げてくれる力がある。でも、さまざまな理由でできない人もいるんだ、とふと気付いたんです。」

      さまざまな理由でネイルアートを諦めていた人が、ネイルアートを楽しめるようにならないだろうか?

      出雲の工場がカラー制作をしていたため、「水性ネイル」の製造を提案することにしたのです。

      ただがむしゃらに走っていた先に一筋の大きな光が見えた木村さん。

      ご縁があって始まった出雲という土地での仕事。それを続けていくことでご縁があった工場と一緒に「ANDIZUMO」を始めることになったのです。

      ANDIZUMOは「AND IZUMO」。出雲と一緒に、という木村さんの覚悟が込められたブランド名です。

      製造会社の代表である家田裕章さん(写真・左)はその時期のことを振り返り、この道のりのすべては「運命」といいます。木村さんはネイル企画の仕事に専念するため新しく会社を設立。長く木村さんを担当していたネイリスト橋本恵瑠さん(写真・右)もチームに参加、ネイルサロンを経営しながら水性ネイルの商品化に没頭します。

      当初は全員が出雲出身ではない「ANDIZUMO」。でもみんなが“ご縁で”出雲とつながった。これこそがまさにご縁の国といわれる出雲ならではのことなのかもしれません。

      ANDIZUMOのカラーは、美しい出雲の色

      「ANDIZUMO」の特徴のひとつは、出雲のさまざまな景色からインスパイアされているというそのカラーバリエーションにあります。

      「ひとくちに海の色といっても、いつ、どこの海かでグラデーションのように色が違います。鷺浦の海、神迎えで見た稲佐の浜の海、新月・満月の海…。そういった出雲の機微に富んだ日常の色々をANDIZUMOのネイルカラーに取り入れています。」

      木村さんのこだわりは、一瞬一瞬目の前に広がった出雲の美しい景色をネイルの色としていかに再現するか。

      「全てに愛を込めて、を大事にしています。出雲で見た景色や感じたものを全てお客様にお伝えしたいんです。」

      そして、水性ネイルというプロダクトには、木村さんが現代を生きる女性に届けたい力強いメッセージが込められています。

      「今の時代、さまざまなことが自由な反面、無意識に自分の思いに制限をかけている人が多いと感じています。子供がいるから、もうこんな年齢だから、周りの人にこう思われるから……。そういった“自分の想い以外”の何かしらの理由で価値を決めてほしくない。無意識の思い込みをANDIZUMOを通して全部取っ払いたい。今は自由が許されている時代だからこそ、自分の思いを大事にしてほしいんです。」

      仕事柄ネイルアートはできない。しかし簡単に剥がせる水性ネイルなら休日だけでも楽しめます。「ANDIZUMO」は諦めていたことを、叶えてくれるポジティブなものなのです。

      気付けば出雲の話になっている。ANDIZUMOが生むコミュニケーション

      ANDIZUMOの商品のカラー名は漢字のものがほとんどで、そこには振り仮名は書かれていません。一見すると読むのが難しい熟語が並んでいます。

      「翠玉」「黒瑪瑙」「薄麻」「凪ノ橙」……。

      「あえて商品名を漢字にしています。読めなければ自分で調べて欲しいなと思っているんです。自ら調べることで、言葉の意味も理解できるし、言葉の意味を知ることで出雲や日本の歴史や文化に興味を持ってもらえるきっかけにもなります。それが手に取ったネイルにさらに愛着が湧くと思うのです。そこから全く違う価値観になると思うし、知らない事を知る自分探しの旅に出かけてほしいです。」

      「実際にお会いしたお客様やInstagramを見て下さっているお客様と読み方のやり取りをする時間がすごく楽しいです。どんな意味だとか、出雲のこんな神話から来ているだとか、出雲のこんな地名からとっただとか。『この言葉にそんな意味があるの?』と驚かれた時の表情が忘れられなくて。意味を知っていただくと出雲を忘れないじゃないですか。流行りとか一過性の人気ブランドじゃなくて、長くお客様の心に残る商品にしたいです。」

      水性ネイルの商品を説明していたはずなのに、「これ、何て読むんですか?」という会話から、気付けば出雲の話になっている。そんな不思議な力が「ANDIZUMO」にはあります。

      日本人の魂の故郷、出雲

      日本を造ったとされる神様、大国主大神(オオクニヌシノオオカミ)を祀っている出雲大社。「ANDIZUMO」がアトリエを構える鷺浦には、出雲大社の摂社があり、穏やかな港町でありながらどこか神聖な空気を感じます。

      三方を山に囲まれた、風待ちの港とも呼ばれる海は、凪のように静か。それは山々を超えた先にある出雲大社に守られているような奇跡的な地形です。

      「出雲は知れば知るほど魅力的な場所。出雲大社だけではない、この魅力を多くの人に知ってもらいたいですね。なので、出雲のお土産としてというより、出雲と一見ご縁がないような場所で、ANDIZUMOを通して出雲との接点を届け続けたいです。」

      出雲に直営店などを持たない理由を木村さんはこう語ってくれました。

      あくまでも、出雲の宣伝隊長。
      「出雲出身の人ではない視点で、出雲の魅力を伝え続けたい。」

      出雲への思いが溢れて思わず涙を流す木村さん。
      “ご縁の町”出雲で生まれたANDIZUMOは、木村さんがこれまで出会ったご縁や目の前に広がった景色を一つひとつ丁寧に表現したものでした。

      今後も、どんな想いが添えられた商品が登場するのか。商品を手にとり、その先にある出雲の美しい風景を想像するのが今から楽しみでなりません。

      ANDIZUMO
      公式サイト(外部サイトに移動します。)https://andizumo.jp/