京都府
2024.12.13 (Fri)
目次
京都で生まれたホワイトショコラのブランド「AMANA BY MITATE(アマナ バイ ミタテ)」。地元・京都をはじめ、日本各地の食材を使ったホワイトボンボンショコラには、食材への想いと繊細な技術が詰まっています。手がけるのは、京料理×フレンチのシェフ・見舘孝司さん。伝統と革新、そして国際色豊かな京都から発信される特別な一粒に込めた情熱に迫ります。
「AMANA BY MITATE」のホワイトボンボンショコラは、宝石のような輝きを放つビジュアルが目を引きます。外側はパリッと軽やかに、そして中のガナッシュはとろりとした食感が広がり、複雑に絡み合う素材の風味が豊かな余韻を舌に残します。見た目も味も一度食べたら忘れられない、特別な体験ができます。
このショコラを手がけるのは、京料理とフレンチを融合させたレストラン「ryu no hige」のオーナーシェフ、見舘孝司さん。「AMANA BY MITATE」は、ショコラティエではなく、料理人が創り上げたチョコレートブランドなのです。このユニークな背景こそが、AMANAのショコラに独自の魅力を吹き込んでいます。
京都生まれ・京都育ちの見舘さんは、地元の料理界でキャリアをスタート。京料理、会席割烹、和食の居酒屋など、さまざまなジャンルで技術を磨き上げた経験は、料理人としての幅を広げることに繋がりました。その後、当時としては珍しかった京料理とフレンチの融合レストラン「ryu no hige」を開き、話題を集めました。
京料理とフレンチは、それぞれが持つ繊細さと素材の旨みを引き出す技法を融合することにより、新たな深みと多様な風味が生まれました。見舘さんは、この相性の良さを活かし、独自の料理スタイルを築き上げました。
「京都・嵐山に2号店を出店し、社員30人、アルバイト20人という大所帯の飲食会社に成長したころぐらいから、料理にもスタッフにも目が行き届きにくくなりました。食材の仕込みひとつとっても秒単位で味が変わるのに、一瞬のタイミングを逃してしまうことも。老舗店なら長く働いているベテラン職人が現場をまとめていますが、ウチでは難しい。本当にいい料理を作るには、愛情をかける必要があるのに、それがきないことにもどかしさを感じました。」
そんな悩みを抱えていたタイミングで訪れたコロナ禍。飲食店の営業自粛の要請に、多くの店舗がテイクアウトで活路を見出す中、見舘さんは初心に立ち返りました。彼が追い求めていたのは、料理を通して日常を超えた「夢」や「ワクワク」を届けること。それを具現化するために目を向けたのが、チョコレートでした。
「シェフは人を幸せにする仕事だと思っています。僕は、料理を日常に持ち込むテイクアウトではなく、夢を感じてもらえるもの、誰もが目を輝かせるものだと思っています。そこで、京料理×フレンチの経験を活かし、地域の自然の恵みをふんだんに使ったチョコレートのブランドを作ることにしました。」
見舘さんはさっそく、チョコレートの製造機械を購入。コース料理のデザートとしてチョコレートを扱う経験があったため、最初は自信を持っていました。しかし、いざ作り始めると、その繊細さに驚かされました。
チョコレートは28.6〜29℃の温度管理が必須で、ガナッシュの水分量や室温、湿度などすべてが仕上がりに影響します。これは料理とはまったく異なる「化学の世界」でした。
「指で持つと崩れる、外側が割れる、ガナッシュが流れ出る。時には腐敗することも。失敗に次ぐ失敗で、一生かかっても完成しないのではと思うほどでした。しかし、独学だからこそ生まれる唯一無二の一粒を思い描き、新たな扉を開くために、諦めず試行錯誤を重ねました。2年の歳月を経て、ようやくホワイトボンボンショコラの商品化に成功したのです。」
「AMANA BY MITATE」の大きな革新は、チョコレートの素材にホワイトチョコレートを使用していることです。一般的なカカオを主成分としたチョコレートでは、食材の香りが隠れてしまうことが多いですが、ホワイトチョコレートのミルキーで控えめな風味なら、食材本来の持ち味を引き立て、繊細な味わいを最大限に引き出すことができます。
「世の中にまだないものを作りたいと思っていました。誰も食べたことのない新しい味を目指す中で、マイルドな風味で味の主張の少ないホワイトチョコレートは、食材やスパイスの味をしっかり出すことができました。」
京都は国際的な文化の交差点であり、伝統を守りながらも常に新しい挑戦を受け入れる風土を持っています。新しい方法でチョコレートを作る見舘さんの挑戦も、そんな京都の精神を体現しているのです。
「AMANA BY MITATE」のホワイトボンボンショコラは、素材選びにも徹底的にこだわりが詰まっています。全12種類のショコラには、地元・京都の厳選素材をはじめ、南国のフルーツ、スパイス、日本酒、ワイン、ラム酒など、国内外から取り寄せた魅力的な食材を巧みに組み合わせています。
たとえば、山形県産のラ・フランスとラベンダーの香り高い組み合わせや、メキシコ産カカオとメキシコのテキーラを融合させた大胆な一粒。また、イギリス産の紅茶・アールグレイとビフィーター・ジンを合わせ、英国風のテイストを取り入れたものなど、素材の産地を揃えることで、一体感のある風味を実現しています。
「一見、意外に思える組み合わせでも、同じ産地の素材同士ならすっと馴染むんです。同じ風土で育ったものは、相性が抜群に良い。これは、京料理やフレンチの料理の考え方と全く同じなんです。」
中でも、特に京都の素材を活かした3種類は格別の存在感を放っています。「京都宇治の抹茶と京の地酒」は、京都・伏見の純米吟醸「桃の滴(しずく)」を贅沢に使用し、抹茶の深い苦みと酒の芳醇な風味が絶妙に融合。
「京都宇治のほうじ茶と京丹波の白ワイン」には、京都府北部・丹波地方の和栗が加わり、ほうじ茶の香ばしさとワインの繊細さが重なり合います。これらは、京都の大地と歴史が生んだ味わいであり、その香りの深さを存分に楽しむことができます。
そして「柚子とレモンの果実」は、京都府亀岡市産の実生(みしょう)柚子を使用。種から育てられた希少な実生柚子は、豊かな香りとしっかりした苦みを持ち、フレッシュな果実感を楽しませてくれます。
これらのボンボンショコラは、まさに大地で生まれた食材のエッセンスが凝縮されています。食材が育った土地の風土と味わいが詰まっており、ひと粒で“大地の恵みを食す旅”へと誘ってくれます。
京都は平安時代から都として栄えてきた街。特に日本料理の世界では、時代の流れに沿って革新的な挑戦を続けてきたことで、洗練された調理技術と独自の美食文化が育まれてきました。国際色豊かな京都では、世界中の文化や食材が絶妙に融合し、新たな価値が生まれ続けています。
「京料理に敬意を払いながら、新しい技術を柔軟に取り入れるようにしています。また、京都の料理人たちは素材を見極める目を養っています。農家さんや加工業者さんは、厳しいリクエストに応えられるよう、良質の素材を揃えています。」
「AMANA BY MITATE」の新たな挑戦は、2025年春のリリースを目指したホワイトショコラをフィナンシェではさんだサンドの開発です。京都の素材に、ハーブや果実、リキュールを組み合わせた全8種のラインナップを展開予定。目指しているのは、世の中にまだ存在せず、誰も見たことも食べたこともない、全く新しい味わいです。
たくさんの人たちに、夢を感じてもらえるように、「初めて」の感激を味わってもらえるように。京都で新しい価値を創造しながら、見舘さんは挑戦を続けています。
AMANA BY MITATE(外部サイトに移動します)https://amana-mitate.com