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「S.Weil by HOTEL NEW GRAND」。横浜随一のクラシックホテルが紡ぐ、おいしい物語

「S.Weil by HOTEL NEW GRAND」。横浜随一のクラシックホテルが紡ぐ、おいしい物語

神奈川県横浜市

    2025.03.18 (Tue)

    目次

      横浜随一のクラシックホテルであるホテルニューグランド。ホテルニューグランドが手がけ、2024年春にオープンした、食に寄り添うライフスタイルのショップが今話題となっています。西洋料理の父ともいわれた初代総料理長サリー・ワイルさんの功績と技を受け継ぎ、サリー・ワイルさんの元でベーカリーシェフとして働いていた大谷長吉氏が1951(昭和26)年に開業した洋菓子店「エスワイル」を受け継いだという「S.Weil by HOTEL NEW GRAND」。改めて、横浜の洋食文化や、ニューグランドが守るスピリットについて深掘りします。

      ホテルニューグランドが紡ぐ港町・横浜の物語

      1927年に開業したホテルニューグランドは、関東大震災からの復興のシンボルとして誕生しました。横浜の発展とともに歩んできたこのホテルには、マッカーサー元帥やチャーリー・チャップリンなど、多くの著名人が訪れています。

      そしてホテルニューグランドといえば「食」。横浜は洋食発祥の地といわれ、今もなお多くの人がホテルメイドの洋食を求めて訪れます。
      それは同ホテル初代総料理長サリー・ワイル氏の存在が大きいのです。

      サリー・ワイル氏は、日本に本格的な西洋料理を根付かせた立役者であり、シーフードドリアを考案したことで知られます。横浜の地で、西洋のエッセンスを取り入れながら、日本人の味覚に合った独自の料理を生み出したワイル氏の精神を、ホテルニューグランドは今も大切に守り続けているのです。

      ワイル氏に続く料理長やパティシエがその後スパゲッティ ナポリタン、プリン・ア・ラ・モードといったメニューを考案したこともあり、「ホテルニューグランドといえば洋食」というイメージがついていったといえます。

      「横浜は港町なので、船で諸外国の文化がたくさん入ってきます。戦後は特にアメリカ文化が入ってきましたし、ホテルの真裏には中華街があります。西洋と東洋が織り交ざったような文化発展をして今日に至ります。その中でホテルニューグランドとしてはやはり“食”を大切にしてきた歴史があるんです。」と語るのは、広報の横山ひとみさん。

      ホテル本館2Fの「ザ・ロビー」。窓の外には海が広がる

      「ホテルニューグランドが大切にしていることは、受け継いでいる伝統や、おもてなしの心。そしてそれと同じくらい“食”を礎にしています。なので2019年頃から、ホテルを訪れなくてもホテルの味が楽しめるようにと、高品質な味わいを提供できる冷凍食品シリーズの開発を進めていました。」

      今日の冷凍技術や、食品加工業界の発展により、本当においしく、ホテルで提供する洋食と遜色ないクオリティーのものが開発できたものの、由緒あるクラシックホテルゆえに、ホテル内に新たにショップをつくるのは難しかったそう。そこで新たにホテルの近くの物件にショップをオープンさせるに至ったのだそうです。

      老舗洋菓子店「エスワイル」の伝統を継承

      「S.Weil by HOTEL NEW GRAND」という名前は、初代総料理長サリー・ワイル氏のもとでベーカリーシェフを務めた大谷長吉氏が1951年に開業したフランス菓子専門店「エスワイル」を受け継いだもの。

      大谷氏は、サリー・ワイル氏から学んだ技術と精神を受け継ぎ、洋菓子店「エスワイル」を開業。ホテルニューグランドは、この歴史ある名前とレシピを継承し、新たなブランドとしてスタートを切ったのです。

      「エスワイルさんは、2011年に長吉さんの息子さんの代で店じまいしていました。今回お話させていただくなかで『ホテルに名前が戻るなら』と快諾していただき、エスワイルの看板商品であった“ルーロモカ”をS.Weil by HOTEL NEW GRANDの看板商品“モカルーロ”にするべくレシピ復刻にもご協力下さったんです。」

      シグネチャーメニュー「モカルーロ」に込められた西洋の味

      現在、ホテルニューグランドのチーフパティシエである柏木康志さんは、その復刻に尽力したおひとりです。

      「以前より開発を進めていた冷凍食品シリーズとは別に、せっかくエスワイルの名を冠するのだから、看板メニューも復刻したいと考えていました。」

      「細かいレシピなどは現存しておらず、あったのは手書きのデッサンみたいなものだけでした。それを元にサンプルを作って、大谷さんにお持ちしました。『いや、こうじゃないな』と指導してもらい、それを6,7回繰り返しました。ある程度再現性高くできたかな?というところで、大谷さんからは『全部一緒じゃなくていいんだよ』と言っていただいたんですよね。もちろん最初は、レシピを再現するというところに注力して、そういう観点で見ていただいたんですが、これでOKとお墨付きをいただいたところで、ここから先は、『S.Weil by HOTEL NEW GRANDのオリジナリティをどう出すのか』にテーマを変えていきました。」

      ロールケーキというと、昨今はふわふわの熱いスポンジを一巻きというスタイルが主流。しかしS.Weil by HOTEL NEW GRANDの「モカルーロ」は、薄い生地をくるくると何重にも巻き込んだものです。なおかつ、クリームはバタークリームにコーヒーの香り豊かなクリームを練り込みました。S.Weil by HOTEL NEW GRANDオリジナルのコーヒー豆「ザ・コーヒー」を使用していて、横浜の喫茶文化とも親和性の高い一品であり、カフェ文化が発展したこの街ならではの味わいともいえます。

      「フォルムや食感はオリジナルを踏襲しつつ、コーヒー風味を加えてもっとティータイムをイメージできるものにアップデートしました。昔に比べれば、お客様の“甘み”に対する反応も違いますし、保存技術や食材そのもののクオリティも時代とともに変わっていますよね。そういった意味ではレシピは完全再現ではないですが、これからも変わっていくと思います。細かいグラム数や厳密な工程というより、その味に対するこだわりや想いそのものが、伝統と呼べるのかもしれませんね。」

      実はこの薄い生地に均一にクリームを塗り、何重にも巻いて綺麗にロールケーキをつくるのには高い技術を要すのだそう。それだけの技術があるスタッフがいるのはホテルで、なおかつ食にこだわったホテルに集まってくるホテルニューグランドならではといえそうです。新しいものを生み出す裏側にも、培ってきた歴史を感じます。

      ロゴも、内装も。意匠のこだわりがホテルクオリティ

      S.Weil by HOTEL NEW GRANDは、日本随一のクラシックホテルが手がけた、とされながらもどこか入りやすい雰囲気や、柔らかい空気を感じさせます。

      入ってすぐに目に入ってくるカウンターは、歴史的建造物でもあるホテル本館の大階段をイメージしたもの。

      • ホテル本館の大階段。ウェディングフォトなどでも有名なスポットだ

      本館の大階段は、イタリア製の手焼きのタイルを使用しているそうですが、S.Weil by HOTEL NEW GRANDでは愛知県の常滑焼を使用しています。間近に見てみるとその再現度の高さに驚かされます。

      壁紙には本館の吊り照明と同じく和紙を使用。ライトカバーには真鍮を使用するなど、随所にホテルクオリティの内装が見られます。

      ホテル本館の大階段。手すりの上にはフルーツバスケットが

      「大階段の上についているフルーツバスケットをモチーフに、壁紙もデザインしていただきました。こんな風に、いろんなところにホテルのエッセンスを感じていただけるようにしています。」

      メインビジュアルは、一昨年の連続テレビ小説「虎に翼」のビジュアルを手がけたグラフィックデザイナーの三宅瑠人さんを起用。クラシックに魅せる部分と、今っぽさを感じさせるバランスが秀逸です。
      インテリアもクラシックながら、曲線を多用することでやわらかく感じます。

      「コンセプトは『やわらかな正統派』。不易流行の精神に似ていると思うのですが、時代が変わっても変わらないものと、時代に合わせて新しいものを取り入れていくということの両方を意識しています。」

      ホテル本館のタイムレスな魅力を再現しつつも、どこかやわらかさや可愛げみたいなものも表現する。それがS.Weil by HOTEL NEW GRANDの魅力になっているといえそうです。

      「S.Weil by HOTEL NEW GRAND」は、新たな横浜の手土産スポットへ

      「S.Weil by HOTEL NEW GRAND」では、「モカルーロ」のほかにも、バターを贅沢に使用したホテルメイドのブリオッシュや、パン類、紅茶やコーヒー、冷凍食品やレトルト商品など、多彩なラインナップが展開されています。

      そのどれもが、「クラシックなのに、今っぽい。」

      地域の銘菓とは、その街の文化や物語を受け継ぐ存在。決して「地元産の特産品」からつくられるものだけとは限りません。横浜の街が育んできた食文化を、未来へとつなぐ「S.Weil by HOTEL NEW GRAND」。新たな横浜の手土産スポットとして、歴史と味の物語を届けてくれることでしょう。

      ホテルニューグランド
      横浜市中区山下町10https://www.hotel-newgrand.co.jp/

      S.Weil by HOTEL NEW GRAND
      横浜市中区山下町31番地7https://www.hotel-newgrand.co.jp/s_weil/