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パビリオンの外にも、万博の楽しみは広がっている。建築・アート・イベント・グルメ――歩くだけで出会う体験

パビリオンの外にも、万博の楽しみは広がっている。建築・アート・イベント・グルメ――歩くだけで出会う体験

大阪府

    2025.06.11 (Wed)

    目次

      大阪・関西万博への来場を実際に計画している人の中には、お目当てのパビリオンをもう決めている人も多いでしょう。各国・企業の個性が光るパビリオンの数々はやはり万博の目玉。とはいえ、パビリオンの中に入らなくても楽しめる体験が、実はたくさん用意されています。見て、歩いて、感じて、思いがけない発見に出会える。「建築としての万博」「祝祭の場としての万博」「買い物や食の冒険」として、パビリオン外の楽しみ方を探ってみましょう。

      建築とアートに導かれる「外観めぐり」

      大阪・関西万博の象徴である大屋根リングは、直径約675メートルもの巨大な環状屋根です。支柱が少なく広々とした空間をつくり、訪れる人はその下を自由に歩き回ることができます。軽量で高強度な素材を使い、耐震・耐風性能を確保しつつ、太陽の動きや風によって表情が変わる美しいデザインが特徴です。

      さらに、この大屋根リングの魅力は、ただ下から眺めるだけでなく、屋根の上に登る体験ができることです。屋根の上は360度のパノラマビューが広がり、万博会場全体が見渡せます。

      そこから感じる風や光、広大な空間のスケール感は、他では味わえない特別な体験です。

      大屋根リングは、屋外と屋内の中間のような半屋外空間をつくり出し、天候に左右されにくく快適に過ごせる場所でもあります。こうした建築の工夫と体験が、万博を訪れる人々に新たな居場所感を与え、未来の建築の可能性を感じさせてくれます。

      万博会場の内部を歩いていると、目を惹くのは、多くのパビリオンの独創的な“外”の姿。各国・企業が誇る建築的・造形的アイデアは、まさに屋外ギャラリーのようです。

      たとえばベルギー館は、真っ白な有機的フォルムが目を引く未来的な建築。なめらかな曲線が幾重にも重なり、まるで風に削られた彫刻のように佇みます。建築コンセプトとして「水の三態(固体・液体・気体)」を表現しています。外観は白く滑らかな曲線で構成され、氷の結晶のような光沢を持つ外装が特徴です。内部は3層構造で、それぞれが水の状態を象徴し、訪れる人々に詩的で没入感のある体験を提供します。このデザインは、ベルギーの建築スタジオ「ASSAR Architects」によって手がけられました。ベルギーの先進技術と美意識を、建物そのものが語っています。

      オーストリア館は、館のファサード(正面部分)が巨大な五線譜のような構造で構成されていて、その上に音符を模した形状や線が配置されています。視覚的に「音楽」や「旋律」を感じさせる建築になっており、オーストリアが誇るクラシック音楽の伝統を象徴し、文化の豊かさや芸術性を表現しています。万博という国際的な場で、音楽を通じた国のアイデンティティを伝えるという狙いが込められています。

      メディアアーティスト・落合陽一さんが手がける「null²(ヌルヌル)」の建築は、“反射”と“揺らぎ”をテーマに、鏡面のような素材で覆われています。しかし、実際は柔らかく振動する特殊な膜素材でできており、風や音に反応して微細に震えます。パビリオンというより「生きた存在」のように感じられ、見ているだけで没入感が得られる体験です。

      「いのちの遊び場 クラゲ館」はクラゲのかたちを模した、曲線的かつ流動的な外観が特徴のパビリオン。プロデュースは音楽家・中島さち子さんです。日射を抑制しつつ、光と風を取り込む設計となっており、ふんわりした雰囲気と優しい色合いの建築は、子どもも気軽に立ち寄りやすい、優しい外観を表現しています。

      こうした「外観めぐり」がもたらす楽しみは、見た目の迫力だけにとどまりません。「この形はどんな文化的背景から来ているのか」「素材や構造は何を象徴しているのか」といった問いを重ねることで、各国・各組織の価値観やメッセージを読み解く手がかりになります。建築とアートの境界を超えた作品が多数存在します。スマホ片手にサッと撮るだけでなく、じっくりと“観る”ことで、万博の奥行きが広がります。

      観る、聴く、出会う。屋外イベントの広がり

      パビリオンの展示以外にも、会場内では連日、さまざまなイベントが開催されています。なかでも注目したいのが、屋外で自由に楽しめるパフォーマンスやセレモニーの数々です。

      万博の中心に位置する大屋根リングの下では、各国のナショナルデーに合わせて、国旗掲揚や伝統舞踊、パレードなどが行われています。各国の音楽が流れ、衣装が揺れ、観客の拍手が響く。その空間に身を置くだけで、まるで世界中を旅しているような感覚になります。

      この日行われたハンガリーのナショナルデーのイベントは多くの人を集め、その多様な文化遺産や伝統が熱をもって伝えられました。初めて目にする異国の文化に、来場者の多くは新たな発見があったことでしょう。

      また、リングの外周部に設けられた「EXPOアリーナ『Matsuri』」では、国内外のアーティストによるライブ、パフォーマンス、地域芸能の披露などが予定されています。報道によれば、屋外型のアリーナとして観覧席も設けられており、訪れるたびに異なる表情を見せてくれます。

      さらに、各国パビリオン前のスペースでは、ゲリラ的に行われるイベントも見逃せません。民族楽器の演奏、ダンスパフォーマンス、子ども向けの参加型アクティビティなど、歩いているだけで“文化”と“祝祭”にぶつかる瞬間があるのが、この万博の醍醐味です。

      ※最新のイベント情報は、公式イベントカレンダーで随時更新されています。

      買い物の冒険、ミャク活の世界へ

      もうひとつ、パビリオンの外で楽しめる体験といえば、グルメとショッピング。会場には、多様なフードトラックやレストラン、公式ショップが点在しており、「食べる・買う」こと自体が一種の冒険になります。

      注目を集めているのが、大丸松坂屋を初めとする4つの「オフィシャルショップ」。ここでは、万博公式キャラクター・ミャクミャクと日本各地の企業やアーティストがコラボレーションしたユニークなグッズが並び、単なる“おみやげ”の枠を超えたローカル文化の再発見にもつながります。

      https://think-local.dmdepart.jp/project/20250502osaka1/

      さらに、食系のお土産のバラエティも豊か。ミャクミャクとのコラボパッケージだけでなく、大阪の名物や日本の人気の食材など、味覚で旅する時間を味わえます。また、海外パビリオンのテイクアウトコーナーやフードトラックも会場内には多く配置され、食べ歩きしながら会場を歩く――それだけでも充分な異文化体験になるはずです。

      「中に入らずとも楽しめる」は、新しい万博の姿

      今回の大阪・関西万博では、パビリオンの展示内容はもちろん充実していますが、それと同じくらい、「パビリオンの外」で広がる体験の設計も丁寧につくられています。建築の美しさに見惚れ、偶然の音楽に耳を傾け、未知の味に出会う。そんな「周縁」の楽しみ方は、むしろこの万博の本質を浮かび上がらせているのかもしれません。

      目的地に向かって一直線に進むのではなく、ときには足を止めて、寄り道して、立ち尽くしてみる。そこにこそ、万博らしい“未来のヒント”が転がっているはずです。