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変わりゆく世界に、変わらない誇り。関西の“らしさ”を未来へつなぐ

変わりゆく世界に、変わらない誇り。関西の“らしさ”を未来へつなぐ

大阪府

    2025.06.13 (Fri)

    目次

      世界各国のパビリオンが大きく話題になる大阪・関西万博。開催地・大阪や関西地方が出展している自治体のパビリオンも人気を博しています。知っているようで知らない、日本各地の魅力。国際的な博覧会に並んだ時に、私たちの知っているローカルはどのように表現されるのでしょうか。気になる“地元”のパビリオンを取材しました。

      「関西らしさ」の濃縮、関西パビリオン

      「いのち輝く関西悠久の歴史と現在」をテーマに関西広域連合が出展し、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、徳島、福井、三重の9府県の魅力を発信する関西パビリオン。一つの建物内に9府県が集まり、各地に根ざした風土や文化を体験型シアター、実物展示、ワークショップなどの形で紹介しています。

      まずは外観に注目。六角形と白い膜で灯篭をイメージした建物の外観には、関西各地の特色をモチーフにした切り絵が配されています。入り口から真っ直ぐに延びるエントランスゾーンには、アーティストの山口哲司氏が手掛けた「関西が織りなす歴史絵巻」が描かれ、来場者を中央のセンターサークルへと誘います。

      高さ12mの吹き抜け空間には、円形に動画が流れるビジョンと、信楽焼や弓浜絣テディベアなど各府県の「触って感じる展示物」を展開。そして放射状に各府県のブースへと続く入り口があり、来場者は自由に好きなブースへアクセスできる動線となっています。

      福井県

      迫力ある恐竜が迎える「福井県」。懐中電灯型デバイスを用いた探索体験や、恐竜の繁栄・絶滅・そして未来への展望を描いたダイナミックなVRシアターで、「恐竜王国福井」を体感できます。

      三重県

      「三重県」は熊野古道や伊勢路など、県内29市町の美しい景色や祭りなどで構成された映像に没入できるトンネル形展示。「日本のこころの原点」であることを感じさせます。

      滋賀県

      飛び出し坊やが迎える「滋賀県」は、滋賀の四季の美しさやびわ湖の風景を、映像と共に最新技術を駆使した光のアートで表現。450個のアクリルボールがさまざまな色に変化しながら、映像や音楽に合わせて空間を上下する様が幻想的です。

      京都府

      「京都府」は、彫刻家の名和晃平氏が空間デザインに協力。文化や食といったテーマで一定期間ごとに展示を入れ替えます。取材時は、400年超の歴史を有する朝日焼や有限会社南條工房の「おりん」などが並び、来場者が実際にリーンと涼やかな音を響かせていました。

      兵庫県

      「兵庫県」は天井に700羽の県鳥コウノトリが舞い、ステンドグラスの回廊に淡路島の線香や杉原和紙などをディスプレイ。奥にはバスに見立てたシアター「HYOGO ミライバス」が設置され、兵庫が続け、乗り越えてきた地域の営みを伝えます。

      和歌山県

      紀州塗りによって仕上げられた巨大な8本の映像タワー「トーテム」が並ぶ「和歌山県」ブースでは、「紀州桐箪笥」の製法で造られた器で和菓子とドリンクのペアリングが楽しめます。金華山織布地を使用した椅子の柔らかな座り心地もぜひお試しを。

      鳥取県

      「まんが」「砂丘」を打ち出す「鳥取県」は、鳥取砂丘の砂を敷き詰めた床面に虫眼鏡デバイスをかざしてアイテムを発見できる「鳥取無限砂丘」が目玉。もちろん、水木しげる氏・谷口ジロー氏・青山剛昌氏の3巨匠の特別展示も見逃せません。

      徳島県

      藍色がキーカラーの「徳島県」は、阿波指物や阿波藍染、阿波和紙などの伝統工芸品を空間デザインに活用しています。中では2本の糸を染める藍染体験に参加でき、糸の1本は持ち帰り、1本は会場のオブジェに結びつけて万博のレガシー作品を作り上げます。

      「大阪発」の未来像:Nest for Reborn(大阪館)

      ホストタウンである大阪が総力を挙げてつくり上げた「大阪ヘルスケアパビリオン」は、未来の健康と暮らしをテーマにした“体験型”の展示が充実。館内に一歩足を踏み入れれば、まるでSF映画のワンシーンのような未来世界が広がります。アトリウムには1970年の大阪万博で展示された「人間洗濯機」がお目見え。奥には、再生医療やiPS細胞など、最先端のヘルスケアにふれられる展示が並び、見るだけで好奇心をくすぐられます。

      注目は、パビリオンの目玉コンテンツ「リボーン体験ルート」(事前予約制)です。来場者の健康データをもとに生成された“25年後の自分”のアバターと対面し、対話を通じて未来の都市生活を体感できるこの体験は、自分自身の健康や生き方と静かに向き合うきっかけにもなりそうです。

      事前予約の要らないエリアにも見どころがいっぱい。「リボーンチャレンジ」コーナーでは、毎週異なる26のテーマで、400を超える中小企業・スタートアップが展示を繰り広げます。取材時は「ドケチ」をキーワードとして大阪の脱酸素の取り組みを紹介していました。

      さらに奥には、「ミライの食と文化」ゾーンが広がります。大阪・関西の料理人や教育機関、協賛企業が連携し、健康的なフードの提供や調理実演を通して、未来の食と地域の知恵を融合させたライフスタイルを提案。片手で手軽に食べられる未来型弁当「ワンハンドBENTO」や、大豆ミートを使った料理のランチボックスなどが販売されています。

      大阪ならではの視点で描かれる、身近でリアルな未来の暮らし。大阪に根差す銀行や企業、学校、病院などがどんな研究に取り組み、「未来の健康」と「未来の都市のくらし」をより良くするために日々探求しているか。そしてその成果が、私たちの生活に着実に結びついてくることを五感で実証してくれるパビリオンであるといえます。

      伝統と未来のあいだにある、「関西」という文化の芯

      関西パビリオン・大阪パビリオンの両館にいえるのは、この展示は決して、「各府県が地元の歴史や伝統をPRする」だけにとどまらないということです。どの府県においても、過去から繋がる技術や叡智の先に、未来への革新があることを示しています。

      例えば、京都府のブースで見られるのは、桶工房の「中川木工芸」。老舗の工房でありながら、現代生活で使えるサステナブルなシャンパンクーラーを作ってます。

      和歌山県のブースで漆塗りの伝統工芸による躯体にバーチャルな最新映像を映し出しています。

      小さな技や風習が、未来的課題に対する“ローカルの解”になっているのです。

      また、「関西人のノリ」というキーワードもここでは大事かもしれません。大阪パビリオンのブースに関西弁がちりばめられていたり、各企業の研究が「おもろい」を発端に始まっていたりと、「面白がり力」「包摂力」「遊びと技術の近さ」といった関西的価値観が原動力になっていることを実感させられます。大阪パビリオンの中に見える「人情」と「メタ視点」、関西広域パビリオンの中にある「土着の知恵」が万博の中で異彩を放ちつつ、共鳴し合っている様子を見ることができます。

      地元は、未来の最前線

      ものごとのはじまりはいつも「小さな粒」。私たちの暮らしも同じで、小さな“ローカル”ごとに先人の智恵を受け継ぎ、それを発展させて未来への一歩を進み、ローカル同士結びついて少しずつ大きな「エリア」としての動きになるのです。そして、発展とは便利で豊かな暮らしを描くだけでなく、自然や地域の人々が共存することが不可欠である。関西・大阪パビリオンの展示は、派手な未来像ではなく、日々の延長にある未来を分かりやすく、遊び心をもって体現化したものでした。万博は「未来技術の祭典」だけではなく、「地元の持続力」を見つめ直す場所でもある—。そんな視点で、もう一度「ローカル」という揺るぎない力を思い出させてくれる場所なのです。

      大阪・ヘルスケアパビリオン Nest for rebornhttps://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/osaka-pv/