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櫛田神社のそばに、新しい賑わいを。「博多町家ふるさと館」リニューアルの裏側

櫛田神社のそばに、新しい賑わいを。「博多町家ふるさと館」リニューアルの裏側

福岡県福岡市

    2025.06.20 (Fri)

    目次

      博多っ子の心の拠りどころ、櫛田神社。その目と鼻の先にある「博多町家ふるさと館」の「みやげ処」が2025年4月にリニューアルし「hakatakara」として生まれ変わりました。手がけたのは「株式会社 博多大丸 九州探検隊」のメンバー。これまで九州の各地で地域の人たちとワクワクを発掘してきた探検隊がおこなった本プロジェクトをご紹介します。

      地域とのつながりも深い、観光拠点・博多町家ふるさと館

      「博多町家ふるさと館」は「町家棟」「みやげ処」「展示棟」の3棟で構成される

      博多町家ふるさと館は、明治20年代後半に建てられ、移築・復元された建物を活用した観光施設です。もともとは博多織元の住居兼工房だった場所なので、商人の暮らしの一端に触れられる文化施設でもあり、町家棟は福岡市の文化財に指定されています。

      「九州探検隊」とは「株式会社 博多大丸」が65周年記念事業としてスタートしたもの

      「古くよりにぎわいの中心地でありながら、地域のつながりを大切にしてきたこのエリアの魅力を未来にもつなげていきたい」と話すのは九州探検隊の部長の伊藤敬一郎です。

      冷泉町にある博多町家ふるさと館は博多駅や天神駅からも近く、櫛田神社のすぐそば

      九州探検隊にとって初めての挑戦

      「『hakatakara』という名にはここを起点に博多のことを知ってもらいたいという願いを込めています。」

      2018年に結成された「九州探検隊」は九州各地の行政と協力し、生産者や商品など地域の知られざる魅力を発掘してきました。彼らの活動には物産展をはじめとした大丸福岡天神店内部での活動と、地域をフィールドした活動のふたつの軸があり、本件は後者にあたるそうです。

      彼らにとって、常設の観光スポットをプロデュースするのは初めてのこと。今回のプロジェクトでも、探検隊10名のメンバーで、「こんなことができそう」「こんなことに挑戦したい」とみんなで話し合いながら、チーム一丸となって進めてきたといいます。

      「hakatakara」の入口ではしめ縄をモチーフにしたロゴマークと、文字が染め抜かれた玄関幕が出迎えます。

      博多発祥にとことんこだわる

      「物産棟」に新たにつくられたカフェも「九州探検隊」によりプロデュースされたもの

      中世時代、大陸文化の入口だった博多には発祥といわれるものや、関わりがあるものがいくつかあります。今回のプロジェクトではそうした博多に縁のあるものにスポットライトをあてました。そのひとつはお茶です。

      抹茶オレと、あんことにわかをモチーフにしたもなかをトッピングしたアイス

      「お茶は博多区にある聖福寺の栄西禅師が中国から持ち帰ったものが日本の起源といわれています。物産棟に新らにつくったカフェでは老舗の『光安青霞園茶舗』に協力を仰ぎ、日本茶のドリンクメニューを用意しています。お茶の淹れかたのレクチャーを受けて、合格点をいただくまで腕を磨きました。」

      うどん風味のお餅⁉

      「小福餅」は3個入りと10個入りを選ぶことができる

      博多発祥といえばうどんも有名です。「発祥の地でうどんを召し上がっていただきたかったのですが……」。残念ながら建物の構造上の理由で、探検隊の果敢なチャレンジ精神をもっても、断念せざるを得ませんでした。「それでも諦めきれずなんとかうどんを」という情熱が結実し生まれたのが「うどん味」の「小福餅」。

      一口サイズの小さなお餅のなかにうどんの出汁のようなあんが包まれていて、食べると口のなかに風味が広がり、餅と合わさってまさしくうどんを連想させます。こちらは和菓子店「お茶々万十本舗 富貴」の監修でできあがりました。

      ほかにもコーヒーは天神の人気カフェ「STEREO COFFEE」とコラボレーションしています。

      ここに来たら何かある、といったワクワク感を

      切り絵作家、故小西一珠喜さんの作品をパッケージに採用

      地域とのコラボは、カフェメニューだけにとどまりません。おみやげも多彩です。博多祇園山笠をモチーフにした切り絵がパッケージに描かれた「DECOチョコ」はここでしか手に入らないもの。

      一番の魅力は「ここでしか手に入らない」という付加価値

      ほかにも福岡市営地下鉄のマークやバス、駅名標、野球ユニフォームなどをモチーフにしたDECOチョコなどもあります。

      にわかバウムは明治39年創業の「東雲堂」とのコラボレーションで誕生

      博多の伝統芸能、博多にわかの象徴である、にわか面をモチーフにしたバウムクーヘンは福岡特産のいちごの「あまおう」味を開発。

      「DECOチョコと同様にここでしか買えません。定番のおみやげももちろんいいのですが、現代の要素を取り入れた新たなおみやげ菓子を提案したかったのです。」

      ショッピングバッグに博多の思い出をしのばせて

      「実はちょっとしたおもてなしを大事にしていまして。」

      見せていただいたのは商品を入れるショッピングバッグ。無地の袋に、明太子や博多にわかなど博多の名物をモチーフにした、かわいいハンコが押してあります。

      「博多や福岡をもっと知ってもらいたいと思ってつくりました。『これ何?』と盛り上がってくれたらうれしいですね。」

      ハンコのデザインは全部で7種類とバリエーションも豊富

      このイラストはなんと探検隊のスタッフが考案し、制作したものだそう。思わず目がとまるような、愛嬌たっぷりのかわいいイラストにおみやげをあげた人、もらった人のあいだで会話もはずむに違いありません。

      地域の人にも愛される施設でありたい

      福岡出身の女性だるま作家、吉田弥稚子さんが制作するヤチコダルマも人気

      ほかにも博多織や博多人形、曲げわっぱといった、博多の伝統工芸品がずらりと並んだコーナーもあります。

      「今後は伝統工芸をリスペクトしながら、現代のライフスタイルにあった伝統工芸に関する展示や、新しいコラボレーション商品などにもチャレンジしたいですね。」

      自家栽培した果物やこだわりの食材でアイスキャンデーをつくる「椛島氷菓」の逸品

      もちろん観光の方だけでなく、地域の方にも愛される場所にしたい、と伊藤。「hakatakara」に行けば博多のおもしろいものが見つかる、そんな場所にしていきたいと誓います。

      半世紀を超えて博多の町に、また

      博多祇園山笠の注連下ろし(しめおろし)を彷彿とさせる、しめ縄柄の暖簾

      50年前、博多大丸はかつて「博多町家ふるさと館」からも近い、呉服町にありました。今年は天神に移って50年を迎えるメモリアルイヤー。「そんな年に博多の町へ戻ってきたと考えると感慨深いものがある」と伊藤は話します。

      「挑戦にはアグレッシブさとスピードがとても重要です」

      「半世紀をこえてあらためて、この博多地区で商いをさせていただくのは意義深いものがあります。この博多を新たな出発点とし、地域の事業者や生産者、お客様、従業員とともにこれからも価値をつくっていきたいですね。」

      「hakatakara」からを拠点に広がる楽しみ

      開放的な内部と対照的に間口の狭さもこの建物の特徴

      「hakatakara」の誕生をきっかけに、ますます博多の拠点として発展していくことが予想される「博多町家ふるさと館」。

      ここを訪れた方が新たな博多の魅力を味わい、新たな発見をし「『次はここに行ってみようか』『今度はこれを食べてみようか』など、次の出逢いへとつながってほしい。」と伊藤は語ります。

      そういう意味でも「hakatakara」の誕生はゴールではなくスタート。この場所から何かが生まれる、そんな熱い予感がします。

      博多町家ふるさと館

      公式ウェブサイト(外部サイトへ移動します。)https://www.instagram.com/hakatakara/