山口県下関市
2025.12.10 (Wed)
目次
本州の最先端・山口県下関市と福岡県北九州市を隔てる、関門海峡。対岸に見える門司港、海峡をつなぐ関門橋など、ダイナミックな風景が広がるこの場所に、2025年12月、全客室オーシャンビューの海峡のデザイナーズホテル「リゾナーレ下関」がオープンします。ウォーターフロントシティとして屈指のポテンシャルを誇る下関において、どのような未来が描かれていくのか。同館の支配人、下関市役所、下関市港湾局の職員の方との座談会の様子も交えリポートします。

唐戸市場から関門橋を見た風景。長い散策道があり、潮風を感じながら散歩ができる。
源平合戦や幕末維新の舞台として名高い下関は中国や朝鮮半島とも近く、古来より交通の要所として発展してきました。かつては北前船の寄港地として華やかに栄え、近代以降は水産都市としてにぎわってきた背景を持ちます。

新鮮な刺身や寿司、加工食品などが買えることでも人気の唐戸市場。
歴史的なコンテンツにあふれる下関ですが、2000年代以降は観光機能をあわせもった魚市場・唐戸市場や、水族館の海響館(2025年8月にリニューアル)などをオープンさせ、観光都市としてのスケールアップを図ることとなります。しかしその結果、部分的に観光客は増えたものの日帰りがメインで、いわゆる“通過型の観光”となってしまっていることが大きな課題でした。

約100種類のフグの仲間を展示しているほか、イルカとアシカのショーも人気な海響館。
そんな中、下関市は2022年に星野リゾートとともに、観光地としての港町再生を目的とした「あるかぽーと・唐戸エリア マスタープラン」という新たな道筋を示すこととなります。そして、そのマスタープランに含まれる計画のひとつが、今回紹介するリゾナーレ下関の開業でした。奥深い文化資産を持つ下関市と、さまざまな街や都市の魅力を掘り起こしてきた実績のある星野リゾートによるコラボレーションは国内で大きな注目を集めています。
「下関、ならびに関門エリアは関門海峡という大きな魅力を持った土地です。歴史的にも豊かな文化が根付いており、コンテンツの宝庫と言っても過言ではありません。」と話すのは総支配人の鈴木さん。

リゾナーレ下関の総支配人・鈴木良隆さん。
星野リゾートは「星のや」「界」「OMO」といったさまざまなブランドを有し全国各地に展開。地域の魅力を掘り起こしてきた実績があります。今回紹介するリゾナーレ下関はその名の通り「リゾナーレ」ブランド。大人も子どもも夢中になって楽しみ尽くす「PLAY HARD」というコンセプトを掲げ、洗練されたデザインと豊富なアクティビティが魅力のファミリーでも楽しめるブランドです。

特筆すべきはおよそ190の客室のすべてが海峡を向いたオーシャンビューを有していること。「国内でも海と並行して建ち、こんなにも海と近いホテルは珍しいのではないでしょうか。」(鈴木さん)
各ブランドに共通していえることは、地域の良さを再発見し、食べ物や工芸品、風景、祭といったコンテンツを宿泊客と共有、発信してきたことです。また季節に応じたプログラムも盛り込むなど、さまざまな手腕でこれまで隠れていて見えにくかった地域の魅力に光を当ててきました。

リゾナーレ下関のロビー。各所にフグや関門海峡をモチーフとしたデザインが息づく。
下関でもその姿勢は変わらず「新たな魅力を地域の方とともに発見し、ともにこのエリアの価値を高めていけたら理想です。」と鈴木総支配人は語ります。

まるで大きな船のようにも見える外観。関門海峡の新たなランドスケープにふさわしい佇まい。
リゾナーレ下関は、唐戸市場、海響館、遊園地「はい!からっと横丁」に並ぶ形で位置しています。地上11階建の外観のシルエットは曲線に包まれ、風景に馴染む白いカラーが特徴です。

「フグも海の波も、関門橋にもあらゆるところに共通するのが曲線。外観にも曲線を多用し、周囲に自然となじむよう意識しています。」と鈴木さんは話します。たしかに、曲線に包まれた外観は周囲に溶け込むようにたたずんでおり、11階建なのに圧迫感を感じることはありません。


最上階の「海峡カバナスイート」は客室の窓際に砂が敷き詰められたスペシャルな部屋。窓の向こうには深い青緑色の水面と、行き交う船が見え、まるで動く絵を見ているかのようです。海峡を背景に、ビーチで時間を過ごしているような気持ちにさせてくれます。


刻々と移り変わる関門海峡の景色を味わいながら体験できるのが、エントランスルームにつながるように設計された全天候型の屋内プール。あちこちにふぐのモチーフを大胆にアレンジしているのが特徴です。

屋外にあるインフィニティプールでは、海峡と一体化したような気分が味わえる。

子どもの遊び心を刺激する遊具も備えたプールや、ホテルから外に飛び出すように設計されている、全長約30メートルのウォータースライダーも魅力。
また、芝生が広がる、なみなみテラスはベンチやカウンター席などを備えており、関門海峡の景色を目しながら優雅なひとときが過ごせます。

宿泊者が自由に使えるなみなみテラスには寝そべることができるベンチも。
一日に約500隻の船が行き来する関門海峡は、全国を見渡しても珍しいほどの難所だそう。そうした珍しい海峡の特質を感じられるアクティビティとして、船長になりきって航海を体験する「Captain Academy」といったプログラムや、クルージングも航行予定です。

オリジナルの衣装を着用し、普段は入れない船長室の見学や、事前学習で学んだ内容を航海中に実践できる「Captain Academy」。

屋外にはサウナが併設されている。
旅の大切な楽しみである食について触れておきましょう。メインダイングであるOTTO SETTE SHIMONOSEKI (オットセッテシモノセキ)は、フグをイタリア料理でアレンジしたオリジナル料理を堪能できます。

フグ×イタリア料理という斬新なコラボレーションを高次元で成立させた料理たち。

ビュッフェスタイルのレストラン、PUKU PUKU(プクプク)では和洋の料理があり、こちらもフグの新たな食べ方を提案するメニューがある。
先述した通り、リゾナーレ下関のオープンは「あるかぽーと・唐戸エリア マスタープラン」の一部です。ここからはマスタープラン策定に関わった下関市観光スポーツ文化部観光政策課の小野さんと、下関市港湾局の梶山さんを交え、下関の未来について語っていただきます。

左から、リゾナーレ下関の総支配人の鈴木良隆さん、下関市観光スポーツ文化部観光政策課の小野千治さん、下関市港湾局の梶山寛樹さん。
まずは、マスタープラン策定に至った背景を伺いました。
「40年ほど前に『ポートルネッサンス21』という国の港湾開発計画があり、その一環で平成8年にこのエリアの埋立地が完成。平成13年には唐戸市場や海響館ができました。ただ、リゾナーレ下関があるこの土地は、これまで何度か開発計画が持ち上がりましたが、リーマンショックなどの影響もあって活用できていませんでした。平成30年に民間活力によるホテル事業の運営を行うための民間事業者の公募を開始したところ、星野リゾートさんが手を挙げてくださったんです。」と梶山さん。

下関市港湾局の梶山寛樹さん。
それに対し、星野リゾートが立候補した理由を鈴木さんはこう語ります。
「ご存じの通りもともと、下関と関門エリアはすさまじい観光ポテンシャルがある地だと思うのですが、何よりも行政の方々が今後観光に力を入れていきたいという、明確な意志を県内外にはっきり示されていたことが私たちにとってはチャンスだったのです。いざ、マスタープランを検討しようという段階においても、外部からきた私たちにもオープンに接してくださる文化に助けられ、建設的に議論させていただけたことがとてもうれしかったですね。」

下関市観光スポーツ文化部観光政策課の小野千治さん。
「全国でさまざまな地域の魅力を発掘、発信していた星野リゾートと一緒にマスタープランを検討することから始まり、その結果、リゾナーレ下関のオープンまでたどり着けたことは私たちにとっても久々の明るい話題なのです。」と語る小野さんはこう続けます。
「下関には多くのコンテンツが存在しますが、それらに周遊性を生み出すことが重要だと考えているんです。そういう意味ではリゾナーレ下関がそのきっかけになることを楽しみにしています。また、鈴木さんに『行政が抱えている課題を共有し、地域と一緒にそのための策を考えたい』とおっしゃっていただけたことを心強く感じておりまして。これからも力を合わせてさまざまなソリューションを検討していけたらと考えています。」

リゾナーレ下関のオープンにより「あるかぽーと・唐戸エリア マスタープラン」に基づくプロジェクトがついに本格的に動きはじめました。果たしてこの街がどのような発展を遂げていくのか。大自然のスケールを感じさせる関門海峡のように、観光を起点としたインパクトのある好循環が生まれる未来が楽しみです。

リゾナーレ下関
公式ウェブサイト(外部サイトへ移動します)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/risonareshimonoseki/