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外国文化の玄関口「旧居留地」にさらなる価値を。大丸神戸店が魅せる街並みの活かし方

外国文化の玄関口「旧居留地」にさらなる価値を。大丸神戸店が魅せる街並みの活かし方

兵庫県神戸市

    2024.01.31 (Wed)

    目次

    江戸時代末期に開港して以来、多様な外国文化を取り入れながら発展してきた神戸。その中で唯一無二の存在感を放つのが「旧居留地」エリアです。大丸神戸店は、そんな旧居留地のランドマークとして多くの人に親しまれてきました。歴史ある街並みが残るエリアで、大丸神戸店が果たす役割とは? これまでとこれからの取り組みについて、大丸神戸店営業推進部の若手スタッフ2人に話を聞きました。

    約150年の歴史をもつ旧居留地。その一角で存在感を放つ「大丸神戸店」

    • 撮影協力:㈱ノザワ

    • ※写真提供:商船三井

    神戸開港にともない、外国人のための住居やビジネスの場として造成された居留地。当時のヨーロッパの都市計画技術をもとに造られた街並みは、明治時代に日本政府へ返還された後も、その面影を残しながら「旧居留地」として大切に受け継がれ、神戸のビジネスの中心地として発展を遂げました。近年ではショッピングを楽しめる大人の街へと変化する一方で、西洋建築の美しい街並みがブライダル撮影の定番としても知られ、SNS映えするフォトスポットとして若い世代からも人気が高いエリアです。

    そんな旧居留地エリアを代表するランドマークが、大丸神戸店です。1819(文政2)年に現在の神戸市兵庫区で営業を開始し、1927(昭和2)年に元町・旧居留地へと移転。現在は、旧居留地の北西の端に位置する大丸神戸店のほか、エリア内の15ヶ所の建物内で店舗を展開しています。

    1987年に旧居留地38番館がオープンしたのを皮切りに、旧居留地内には大丸の周辺店舗として約50ブランドが並びます。西洋建築の雰囲気とショッピングが楽しめるオシャレな街として、旧居留地の新たな魅力を創出する役割を担ってきたといいます。

    「美しい西洋建築や落ち着いた街並みをただ保存するだけではなく、多くの人に親しんでもらうことが必要だと当時の担当者は考えていたそうです。百貨店単体で集客するのではなく、旧居留地エリア全体で盛り上げていきたいという姿勢は、今も昔も変わりません。」と話すのは、大丸神戸店 営業推進部の有馬早紀。

    エリア全体の魅力アップを目指す大丸神戸店の姿勢は、地元・神戸の人々に広く支持されるようになりました。時代とともに、その取り組みは次なるステージを迎えようとしています。

    西洋建築が立ち並ぶ美しい街並みを、次世代へ伝えたい

    「子どもの頃から、家族で大丸神戸店に出かけることが楽しみでした。」と話すのは、入社2年目の営業推進部 孝橋菜月。兵庫県出身で、地元への想いはひとしおだそう。旧居留地や大丸神戸店の魅力を、次の世代へと伝えていきたいと意欲を語ります。

    「旧居留地の魅力を次世代に伝えていくことは、大丸神戸店のリブランディングにもつながります。旧居留地の街並みをスマホで撮る若い世代にも、大丸の館内へ足を運んでいただきたいと思っています。」

    そのためにはこれまでとは違った視点で発信する必要があると話します。

    「旧居留地のクラシックな良さ×新しいコンテンツ。うまく掛け合わせができれば、若い世代にもより支持されるエリアになれる気がしています。まずは、旧居留地でのイベントやエリアの情報を発信することで、大丸神戸店の魅力も多くの人に伝えられたら。」

    昔ながらの良さを大切にしながら、次世代に向けた魅力づくりが始まっています。

    古き良きものを活かし、新しい価値をつくるプロジェクト

    10年後、20年後、さらにその先もお客様に親しんでいただくために、何ができるか。
    新しい価値をつくるためのさまざまな試みが行われています。

    その1つが、「新居留地」をテーマに創設されたパブリックスペースです。

    パブリックスペースは、旧居留地を新たに解釈する空間的なアプローチとして、「場の価値の転換」に焦点を当てた取り組みを行うクリエイティブ集団「SKWAT(スクワット)」とタッグを組み、2023年6月に誕生しました。

    BLOCK30(大丸カーポート)の空き区画をアート作品のような空間に転換。兵庫県・淡路島の地場産業として知られる淡路瓦を用い、造成当初の居留地をイメージしたインスタレーションという手法を用いて、休憩の場やイベントスペースとしても活用できる『開かれた』空間へと生まれ変わりました。また、次のテナントに『継承』するための期間限定であることを配慮し、インスタレーションの素材は再利用しやすい軽量鉄骨(LGS)を使用しています。

    (関連記事はこちら:https://think-local.dmdepart.jp/story/20230731hyogo1/

    さらにコロナ禍を経て、旧居留地から大丸神戸店への周遊を促すイベントにも力が入ります。2023年12月には、クリスマスに合わせた「旧居留地ホリデイズマーケット」を開催。このイベントは、入社2年目の若手社員による発案がカタチになったものなのだとか。

    「同世代に届く企画を考えることは、若手社員のミッションです。そこで、ヨーロッパで行われるクリスマスマーケットのような、華やかで賑わいのあるイベントを社内で提案しました。」と孝橋。

    ファミリーが楽しめる昼の時間帯からイベントをスタート。イベントのために歩行者天国となった神戸店の東側の道路で、地元・神戸の人気店によるマルシェが行われたほか、DJを招待しての音楽の演出や、アート映像が映し出されるシンボルツリーの設置など、買い物以外にもさまざまな楽しみ方ができる工夫が凝らされました。

    「写真を撮りたくなるような空間を演出し、SNSで誰かに教えたくなるようなコンテンツづくりを心がけました。道路の使用許可や安全面の確保は、これまでのノウハウをよく知っている先輩にサポートしてもらいました。」と孝橋は当時を振り返ります。

    旧居留地と大丸神戸店をつなぐ試みとして、当日はエリア全体を使った「謎解きイベント」が開催され、約500人が参加したのだそう。このほか、大丸神戸店ではサンタさんとの写真撮影ができる企画や、大丸の屋上でクリスマス映画が鑑賞できる「ルーフトップシネマ」なども開催され、ホリデイシーズンを華やかに盛り上げました。

    「小さなお子様連れのファミリーや、若いカップル、お年を召した方まで、本当に幅広いお客様にご来場いただきました。」と有馬は手ごたえを語ります。

    「一度きりで終わるのではなく、お客様から、毎年楽しみにしているといっていただけるようなイベントに成長させていきたいです。」と2人は口を揃えました。

    旧居留地から神戸全体の活性化へ。より広いエリアの活性化を目指す

    クリスマスの次はバレンタイン。「大丸神戸店の洋菓子バイヤーが選りすぐったパティシエのチョコレートが集う『旧居留地バレンタイン』コーナーにぜひ注目していただきたいです。旧居留地エリアの飲食店ではバレンタインの限定メニューを展開するほか、Instagramを活用したキャンペーンなども開催しています。食品チームと連携し、大丸の店舗はもちろん、旧居留地エリアにある飲食店にもご協力を仰ぎながら、エリアを挙げて盛り上げていきたいです。」と有馬。

    「神戸は日本におけるバレンタイン発祥の地といわれていて、洋菓子は地場産業でもあります。旧居留地はもちろん、洋菓子の街・神戸の魅力を発信して、県内外から多くの人に来ていただきたいですね。」と孝橋も意気込みを語ります。

    今後は兵庫県や神戸市などの自治体とも連携し、さらに広い範囲でのプロモーションを行っていきたいとのこと。

    「地域とかかわりを深める中で、旧居留地を起点に周辺エリアとのコラボレーションも目指しています。旧居留地という小さなエリアから、より広い範囲の活性化へとつなげていけたら。」

    古き良き街並みにさらなる魅力をプラスする、大丸神戸店の躍進に期待がかかります。