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スターバックスが愛する「地元」。JIMOTO Madeがつなぐ地域とものづくり

スターバックスが愛する「地元」。JIMOTO Madeがつなぐ地域とものづくり

    2026.04.30 (Thu)

    目次

      スターバックスというブランドに、多くの人は“グローバル”を思い浮かべることでしょう。世界中どこへ行っても、同じ品質のコーヒーが楽しめる場所。均質なサービス、統一されたブランド体験。それがグローバルチェーンの強みでもあります。しかし、スターバックス コーヒー ジャパンには、そうしたイメージとは少し異なる取り組み「JIMOTO Made」があります。この取り組みは、スターバックス コーヒー ジャパンが全国の地域産業と協働し、その土地でしか手に入らない商品を作り販売する取り組みです。商品は大量生産ではなく、職人の手で一つひとつ仕上げているため、一度に用意できる数は多くありません。販売されるのは、その地域の店舗のみ。グローバルブランドであるスターバックスが、なぜそこまで“地元”にこだわるのでしょうか。「JIMOTO Made」を担当している小野美香さんに話を聞きました。

      全ては“職人の姿”に心を動かされたことから

      取り組みが始まったのは2015年。きっかけは、一人の商品開発担当者が地域の工房を訪れたときに目にした光景だったといいます。全国にある伝統工芸や地域産業の現場では、決して大きな産業とはいえない環境の中でも、職人たちが静かにものづくりを続けていました。その姿に強く心を打たれた担当者は、「この産業や技術、文化を未来に残すために、何かできないだろうか」と考えたそうです。海外の大量生産品が広がり、日本の伝統産業が影を潜めているのが現実でした。

      「それでも、技術を守りながらものづくりを続ける人たちがいる。その存在や産業をもっと多くの人に知ってもらえないか——。そんな想いがきっかけとなり生まれたのが『JIMOTO Made』です」と語るのは、スターバックスで「JIMOTO Made」を担当する小野美香さん。

      スターバックスの店舗には、マグカップやタンブラーなどのグッズが並んでいます。小野さんが所属しているチームは、そうした商品を開発するマーチャンダイジング部門。スターバックスには季節のプロモーション商品や地域限定グッズなど、さまざまなシリーズがありますが、「JIMOTO Made」は少し異なる魅力を持っています。

      「[JIMOTO Made]マグShigaraki 赤/黒 325ml」。信楽焼のアイコンともいうべき狸を彷彿とさせるフォルム。

      「JIMOTO Made」の目的はあくまで“地域とのコミュニケーションの醸成”。商品と同じくらい、その背景にあるストーリーやコミュニティとのつながりが重視されているのです。

      商品作りは、全国の店舗パートナーの提案から

      全国各地でそれぞれ販売されている「JIMOTO Made」。

      この「JIMOTO Made」でユニークなのは、商品開発のスタート地点。一般的な商品では、MDチームが市場を分析し、アイデアを考えますが、この取り組みでは、全国の店舗パートナー(従業員)による応募が起点となります。

      「私たちの地元にはこういう産業があります」「この技術をもっと多くの人に知ってほしい」といった想いを持ったパートナーたちが、自ら企画を提案。地域のことを一番よく知っているのは、そこで暮らし、働く人たちです。観光ガイドに載っている有名な産業だけでなく、地元だからこそ知っている技術や文化もあります。スターバックスの店舗には、そんな“地元愛”に溢れたパートナーが多いのだそうです。

      当初から全国の店舗に募集を行い、想像以上に多くの応募が集まりました。「地元の産業を知ってほしい」「スターバックスなら何かできるのではないか」と考えるパートナーが多かったのです。現在も地元愛、地元へ貢献したいという想いに溢れた応募が数多く届きます。

      商品化の決め手は“地域への想い”

      どのアイデアを商品化するか決める際には、「産業の特性を活かし、地域ならではの要素を商品にできるか」「ブランドとの親和性はあるか」など、現実的な条件も考慮されます。しかし、小野さんが「一番大事にしている」と語るのは別のポイントです。それは、地域に対する想い。

      応募の際には、単に産業を紹介するだけではなく、その地域への想いや商品を通じてどんなコミュニケーションを生みたいかを書く欄があります。そこに多く書かれているのが、産業の現実です。

      「職人が高齢化している」「後継者がいない」「産業構造が変化しつつある」といった状況を目の当たりにし、自分たちに何かできないかと考えるパートナーたちの言葉には強い熱意があります。商品を作ることがゴールではありません。その商品をきっかけに、地域とどうつながるか。だからこそ、商品の背景にある物語や想いが重要になるのです。

      商品はきっかけにすぎない

      発売になったばかりの「[JIMOTO Made]レザーボトルショルダーバッグ台東」。見覚えのあるペーパーカップのデザインが模されている。

      商品化するアイデアが決定すると、まず工房やメーカーを訪れます。制作工程を見学し、産業の背景を学ぶためです。その後職人とスターバックスが何度も話し合いをし、商品が出来上がった後、店舗のパートナーたちも工房に訪問するといいます。例えば、最近発売された台東区のレザー商品「[JIMOTO Made]レザーボトルショルダーバッグ台東」。

      台東区は革産業が盛んな地域で、ヒントになったのは「袋物」と呼ばれる伝統的な巾着文化でした。その発想を現代のライフスタイルに合わせ、ボトルを持ち運べる縦型バッグがデザインされたそうです。

      また、青森の津軽びいどろのグラス「[JIMOTO Made]津軽びいどろ HIROSAKI/TSUGARU/AOMORI/GOSHOGAWARA 266ml」は、実際に手に取ると一つひとつ表情が違います。

      一口に「津軽びいどろ」といっても、地域によって文化がかなり違うことが「HIROSAKI/TSUGARU/AOMORI/GOSHOGAWARA」と4エリアごとに違うカラーリングで表現されています。

      さらに、手仕事の面白さもこの商品の大きな特徴です。

      「同じ模様は二つとないんです。溶けた色ガラスを一瞬で付ける職人技によって生まれる模様は、全て一点ものなんですよ。」

      大量生産では生まれない個性がそこにはあります。こうした背景を知ることで、店舗で商品を販売するパートナーたちも、自分の言葉でその魅力を伝えられるようになります。「JIMOTO Made」では、商品と同じくらいそこから生まれるコミュニケーションも重要だと感じています。

      コーヒーストアで生まれる地域イベント

      商品が生まれた後も、地域のお客様、職人、店舗パートナーという地域コミュニティの関係は続きます。例えば、静岡の天竜杉を使った商品「[JIMOTO Made]天竜杉スリーブ付カップ237ml」には、地域の歴史がデザインに込められています。天竜杉は、もともと天竜川の氾濫を防ぐために植えられた木でした。その歴史をデザインに落とし込み、川の流れの中にスターバックスらしいモチーフをさりげなく忍ばせています。

      こうした商品をきっかけに、店舗では浜松市と連携し箸作りのワークショップも開催されました。参加者は木材に触れながらものづくりを体験した後、コーヒーを楽しみます。コーヒーストアが、地域産業を体験する場所になる。そこには、新しいコミュニティの形が生まれているのです。

      「その地域でしか買えない」の意味

      「JIMOTO Made」の商品は、その地域の店舗でしか販売されません。今の時代、オンライン販売をすればもっと多く売れるはずでしょう。それでも限定販売を続けているのには理由があります。

      「まず一つは、地元の方に愛着を感じてもらうためですね。自分たちの地域でしか買えない商品。そこには、地域の産業や文化への誇りが生まれます。」

      もう一つは、その土地を訪れるきっかけを作ること。「その商品が欲しいから、その地域に行ってみよう」という小さな動機が、新しい出会いを生むかもしれません。もちろん、職人の手仕事による商品であるため、大量生産が難しいという現実的な理由もあります。しかし、その生産ペースこそが、この取り組みの価値でもあるのです。

      “グローバルブランドだからこそ”できること

      現在、「JIMOTO Made」は平均すると2年に1エリアほどのペースで新商品が生まれています。企画から発売まで数年かかるケースも珍しくありません。ガラス、木工、陶器、革製品など、地域ごとに素材や技術は異なりますが、全てが職人の手で作られたものです。例えば木製のカップスリーブは、見た目以上に難しい商品だったといいます。

      「[JIMOTO Made]天竜杉スリーブ付カップ237ml」のスリーブは天竜杉で作られている。

      木は季節によって伸び縮みするため、きつ過ぎても緩過ぎても使えません。

      「冬はどれくらい縮むんですか?」

      そんな会話を職人と何度も重ねながら、絶妙なサイズを探っていったそうです。こうした開発にはどうしても時間がかかります。しかし小野さんは、それこそがこの取り組みの価値だと話します。

      「開発期間が長いからこそ、作り手との関係が深くなるんです。」

      乗り越える課題が多ければ多いほど、エピソードが増えれば増えるほど、接客時のお客様とのつながりのきっかけにも、コミュニケーションにもなり得るのでしょう。

      「スターバックスはグローバルブランドでありながら、同時にそれぞれの店舗が地域に根差した存在でありたいと願っています。店舗はそれぞれの街にあり、その地域のコミュニティの一部でもある。だからこそ、その地域の文化や産業に目を向けることに意味があります。スターバックスという場所が、地域の魅力を知るきっかけになればうれしいです。」

      若い世代の来店も多く、世界中に店舗を持つスターバックスだからこそ、その“地元愛”が発信するメッセージは大きいといえます。コーヒーストアから始まる地域とのつながりは、これからも静かに広がっていきそうです。

      ※スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京とオンラインストアでは、「JIMOTO Made」の魅力を広く伝える取り組み「JIMOTO Made+」も実施されています。

      • 「JIMOTO Made+ 読谷マグ 陶眞窯 296ml」。

      • 「JIMOTO Made+ 中予マグ ヨシュア工房 藍296ml」。

      • 「JIMOTO Made+ 墨田 江戸切子グラス237ml」。

      JIMOTO Made

      公式ウェブサイト(外部サイトに移動します)https://www.starbucks.co.jp/jimoto/

      JIMOTO Made+

      公式ウェブサイト(外部サイトに移動します)https://www.starbucks.co.jp/reserve/roastery/onlinestore/jimoto_made_plus/